2009 Fiscal Year Annual Research Report
量子ドットを利用した超高速偏波制御光デバイス技術の研究
Project/Area Number |
09J00935
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
井上 知也 Kobe University, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 量子ドット / 半導体光増幅器 / 分子線エピタキシー / 偏波制御 |
Research Abstract |
積層した自己形成InAs量子ドット(QD)間の電子波動関数の結合に基づいて偏波制御を可能にする新たな半導体光増幅器(SOA)デバイスの創製を目的として研究を行った。SOAの実用化に向けチップ面内に平行な光電場(TE偏波)と垂直な光電場(TM偏波)に対する光利得の異方性を解消することが再重要課題となっている。偏波無依存SOAが実現すれば、光再生中継器や全光スイッチ等その応用範囲は広く、次世代の光通信網における基幹素子となると期待される。 本研究課題では、過去の研究で見出された電子的に結合した積層QDにおけるTM偏光発光強度の増強という新たな概念に基づき、光利得の異方性を1dB以下とできるSOAデバイス構造の実現を目指した。平成21年度は、上記概念に基づく偏波制御の原理検証のため、まずQD結晶作製技術が確立しているInAs/GaAs QD系において実験を行った。分子線エピタキシャル結晶成長装置を用いて様々に条件を変えた積層QD構造を作製し、断面透過型電子顕微鏡による結晶構造評価、フォトルミネッセンス(PL)測定による光学特性評価を行った。電子的結合の生成には中間層GaAs膜厚が最重要パラメータであることを見出し、この最適値を4.5nmと決定した。また、QD供給量を精密に制御することで積層に伴う圧縮歪の蓄積を低減し、9層まで積層方向に配列したQDの作製に成功した。精密で再現性に優れる偏光特性評価を行うため新たに端面PL評価系を構築して測定を行い、1.3μm光通信波長帯においてTM偏光成分が支配的となるPLスペクトルを得ることに初めて成功した。この積層QD構造を用いて、AlGaAs光閉じ込め層を有するp-i-nダイオード素子構造を結晶成長しメサ型SOA素子を作製した。SOA素子の端面エレクトロルミネッセンススペクトルにおいて、TE/TM偏波成分強度比が1.2dBとなり目標の1dBに迫る特性を示した。本結果は、電流注入下で動作させるSOAにおいて偏波無依存動作を十分に期待できる成果であり、本手法による偏波制御の有効性を実証できたものと考える。
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Research Products
(12 results)