2010 Fiscal Year Annual Research Report
中間的スケールにおける脳情報処理の一般ネットワーク数理モデルの構築及びその解析
Project/Area Number |
09J00937
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
奥 牧人 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 神経情報処理 / メゾスケール現象 / 数理モデリング / 結びつけ問題 / 進行波 / アトラクタ |
Research Abstract |
脳の情報処理メカニズムを解明するにあたり、ミクロレベルの電気的、化学的な信号処理と、生体の行動として観測されるマクロな現象との間には、大きなギャップがあることが問題となっている。本研究は、それらの中間にあたるスケールで生じるさまざまな現象に対して、それを適切に記述するための数理モデルの開発及びその解析を目的とするものである。 本年度は、前年度に引き続き、新たな数理モデルの構築及びその解析を行うことに加えて、得られた数理モデルに対して、その生物学的な根拠及び妥当性を評価し、また、工学的な問題解決の手段としての応用にも取り組むことを計画していた。 まず、前年度に提案した「結びつけ」現象を定性的に記述する数理モデルに関して、その生物学的対応や解釈をより詳細に調べて整理し(例えば、局所的な神経細胞群の活動のパターンとアトラクタとの対応関係など)、雑誌論文としてまとめた。 また、前年度に開発した、並列計算による大規模な神経回路のシミュレーション技術を利用し、カラー画像をネットワークに記憶させ、神経ダイナミクスによってそれらを取り出す手法を提案した。この手法は神経回路網を用いた画像処理などへの応用に役立つものと考えられる。また、ネットワークの有する複雑なダイナミクスの基盤となっている「カオスの骨格」についても調べ、それが非常に長い周期軌道であることを明らかにした。 また、近年「能動的な相関除去」という新たな現象が見つかった。この能動的な相関除去が生じている状況においては、多層に連なる神経細胞群の挙動が、単純な一次元写像の反復によってよく近似されうることを発見した。この知見は、細胞集団の機能を単純な写像で記述するメゾスケールモデルの妥当性を支持するものである。 最後に、モジュール構造を持つ神経回路網を考え、それが高いノイズ耐性と計算能力を備えることを示した。
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Research Products
(7 results)