2010 Fiscal Year Annual Research Report
ホログラフィック原理で切り開く超弦理論とゲージ理論の新地平
Project/Area Number |
09J00951
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菊池 徹 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 場の理論 / ソリトン / ダイナミクス / 相対性理論 / ホログラフィック原理 |
Research Abstract |
Skyrmionはメソン場の低エネルギー有効理論に現れるソリトン解で、バリオンの模型として特に80年代あたりから注目を集めてきた。バリオンのスピン(およびアイソスピン)とエネルギースペクトルとの関係を記述するためには、Skyrmionの回転運動を調べることが必要になる。簡単な概算によって、現実のバリオンのエネルギースペクトルを再現するためには、Skyrmionは非常に速く回転していなければならないことがわかる。しかし今までのSkyrmionの回転運動の解析は、非相対論的な極限(ゆっくり回転する極限、ソリトンが剛体である極限)の下で行われるか、もしくは何かしらアドホクな仮定に基づいたものがほとんどである。 今回の研究では、従来の非相対論的な回転運動の取り扱いに、相対論的な補正を加えたものである。具体的には、回転によるSkyrmionの変形をleading order(変形を回転の角速度で展開したときの、leading term)まで求め、それによって、場の汎関数として与えられる様々な物理量に相対論的な補正を与えた。回転によるSkyrmionの変形は、場の運動方程式の解として求めたもので、手で与えたものではない。数値的な結果としては、回転運動エネルギーに対する我々の相対論的補正は、剛体近似から与えられるものと同等もしくはそれ以上の大きさを持っていることが分かった。つまり相対論的な補正は大きく、剛体近似は(我々の調べたケースにおいては)定量的に適切ではない。 ソリトンのダイナミクスは剛体近似の範囲で扱われることが多く、今回の仕事はそういった剛体近似に対して相対論的な補正をどのように加えていけばよいのか、その数値的な寄与はどの程度なのかという関心に対してひとつの例を与えることができた。 ホログラフィック原理において重要なDブレーンもソリトンの一種であり、今回の研究のようにソリトンのダイナミクスについて理解を深めることは、この原理の理解につながっていく。
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Research Products
(6 results)