2009 Fiscal Year Annual Research Report
層状超伝導物質へのコインターカレーションによるキャリア数・結晶構造制御と電子物性
Project/Area Number |
09J00959
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高野 琢 Osaka University, 基礎工学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 超伝導 / 層状物質 / インターカレーション / 電子物性 |
Research Abstract |
実用化に向けての期待から、高井超伝導転移温度(Tc)を持つ、いわゆる高温超伝導物質の研究は社会的にも興味が持たれ、これまで盛んに研究が行われてきた。過去に発見されている高温超伝導物質はいずれも次元性の低い層状構造を有するという共通点があり、この低次元構造が高いTc発現のカギとなっている可能性が指摘されてきた。そこで本研究では、層状窒化物超伝導体LixHfNClに着目した。この物質ではこれまでの本研究により、層間距離を意図的に拡げる、即ち物質の次元性を下げることにより、Tcが約30%程度も上昇するという振舞いを明らかにしてきた。これは理論的にも説明不可能な現象であり、層状物質における高いTc発現のメカニズムを明らかにする知見が得られる可能性がある。 そこで本研究では、層状窒化物超伝導体LixHfNClにおいて、層間距離を拡げる前後での光反射率測定を行い、プラズマ周波数の解析からキャリア密度・有効電子質量などの解析を行い、層間距離拡大に伴うTc上昇のメカニズムを明らかにすることを試みた。その結果、層間距離拡大前後で電子伝導面内でのキャリア有効質量はほとんど変化しないことを明らかにした。これは、層間距離拡大に伴うTcの上昇が状態密度の変化によるものではなく、フォノンに加えて電荷やスピン揺らぎなどが系の次元性低下に伴い増大した結果であることを示している。即ち、次元性の低い超伝導物質でこれまで高いTcが観測されてきたのは、おそらくこれらの物質においては既存の理論で期待されるよりもはるかに大きい揺らぎが存在することを示唆しており、今後層状物質における高温超伝導発現機構の解明に繋がる研究成果であると考えている。
|
Research Products
(1 results)