2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J00961
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長谷川 太祐 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 水 / 分子動力学法 / 分極ポテンシャル |
Research Abstract |
本年度はまずPOLIRポテンシャルを使用して水のIR吸収スペクトルの分子動力学(MD)法による計算を行った。その結果、POLIRポテンシャルの水のOH伸縮のIR吸収スペクトルについては実験と比較してピーク位置はシフトするものの、その強度や形状について妥当な値を示すが、HOH変角振動のシグナルは実験によるシグナルと比較して非常に弱く、また1000cm-1以下の分子間振動由来のシグナルもその強度が実験とは一致しないことがわかった。2次元IR(2DIR)シグナルは水の分子間運動に敏感であるため、POLIRポテンシャルを使用して2DIRシグナルの計算を行うことは妥当ではないという結論に至った。したがってまず2DIR計算に用いる水の経験ポテンシャルの開発を行うことにした。ポテンシャルの形状としては3点水分子モデルを用いた。各相互作用点に構造に依存する四重極子までの多極子を配置した。また水OH伸縮のIR吸収強度は水分子の分極率に強く依存するため、分極率を正しく再現するようTholeの原子分極率モデルとcharge response kernelを使用した。電荷、双極子、四重極子は188個の異なる構造の水分子についてCCSD/aug-cc-pVQZレベルの電子状態計算を行い、その結果得られた電子密度を分配多極子展開して多極子モーメントを計算しこれを適当な関数を用いてフィッティングした。また分極率計算に用いるパラメータも27個の異なる構造の水分子について有限電場計算を行いその結果をフィッティングした。ポテンシャルのパラメータはIR吸収スペクトル、自己拡散係数、動径分布関数、水クラスターのエネルギー、常温における圧力を再現するように選ぶことにした。これまでのところ動径分布関数、IR吸収スペクトル圧力に関しては妥当な値を得ることができるパラメータを見つけることができた。
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