2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J00961
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長谷川 太祐 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 水 / 分子動力学法 / ポテンシャル |
Research Abstract |
本年度は2次元赤外分光法の分子動力学による理論計算のための水ポテンシャルの開発を行った。既存の水ポテンシャルには実験の赤外吸収を再現し、動径分布関数、圧力等をも同時に再現するものはない。従って非線形多次元分光の研究のために新たな水ポテンシャルを開発することは非常に重要である。開発した水ポテンシャルは、室温における密度、動径分布関数、自己拡散係数等を良く再現する。またこのポテンシャルを用いて赤外吸収とラマン散乱スペクトルを分子動力学法により計算した。水分子の束縛並進モード、束縛回転モードにそれぞれ対応する200cm^<-1>,800cm^<-1>のピークを開発したポテンシャルモデルは良く再現する。また、H-O-H変角振動に対応する1700cm^<-1>のピークも強度は弱いものの再現する。O-H伸縮振動に対応する3700cm^<-1>付近のスペクトルは調和量子補正因子を用いた場合には強度、線形ともに非常に良く再現することが可能であった。これより新たに開発した水ポテンシャルは既存のポテンシャルと比較して赤外吸収を分子間運動に対応する低振動数領域から分子内運動に対応する高振動数領域まで線形、強度ともによりよく再現することができることが確かめられた。開発した水ポテンシャルでは高精度の分子内ポテンシャル関数を使用し、分極パラメータと分子双極子面を同時に決定している。これにより赤外吸収スペクトルを非常に良く再現することができるようになった。分極効果のないポテンシャルと比較して計算コストは40倍程度大きくなるが、このポテンシャルを用いて分子動力学法により2次元赤外分光信号の計算が可能であることを確かめた。本ポテンシャルは分子動力学法による水の非線形多次元分光の研究に大きく寄与することが期待される。
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Research Products
(3 results)