2009 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザウイルスのゲノム複製に視点をおいた細胞特異性及び宿主域解析
Project/Area Number |
09J00964
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
川口 敦史 Kitasato University, 北里生命科学研究所, 特別研究員(SPD)
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Keywords | インフルエンザウイルス / 宿主因子 / 抗ウイルス薬 / RNAポリメラーゼ / in silicoスクリーニング / MCM |
Research Abstract |
近年の疫学研究から、細胞に感染後、ウイルスの転写およびゲノム複製活性の違いを一因として、インフルエンザウイルスの病原性や宿主域が規定されることが議論されている。インフルエンザウイルスゲノムの複製反応は宿主因子への依存性が高く、精製したウイルスポリメラーゼのみでは、試験管内においてゲノム複製反応は再現されない。そこで本研究では、インフルエンザウイルスゲノム複製の分子機構の解明、および、その反応を支える宿主およびウイルス由来の因子の同定を目的とし、インフルエンザウイルスの細胞特異性および宿主域の理解に資することを目的とした。これまでに試験管内ウイルスゲノム複製反応を促進する宿主因子として、IREF-1/MCM複合体を同定した。また、ウイルスゲノムに結合し、Ribonucleoprotein(RNP)複合体の形成に必須であるウイルスタンパク質NPによっても、ウイルスゲノム複製は促進されることを明らかにした。本年度、NPの詳細な作用機構を解析したところ、NPはMCMと同様にウイルスポリメラーゼのプロモーターからの離脱を促進し、ウイルスポリメラーゼが開始反応から伸長反応へ移行するのに必要であることが明らかになった。この促進活性にはNPのRNA結合能は不要であり、NPはウイルスポリメラーゼと結合することで、複製活性を制御すると推測される。また、感染細胞内では、複製されたウイルスゲノムは次の複製反応の鋳型として新規にRNP複合体を形成する必要がある。しかし、試験管内ウイルスゲノム複製反応系では、合成されたウイルスゲノムにNPは結合せず、新規にRNP複合体を形成できないことが観察された。よって、新規合成鎖にNPが結合してRNP複合体を形成するには、NPのシャペロン分子として機能する宿主因子が必要であると推測され、現在、いくつかの候補因子を同定することができている。また、本研究課題では、ケミカルバイオロジーに関連した研究領域の発展を背景に、決定したウイルスポリメラーゼ複合体の部分結晶構造を基に、in silicoスクリーニングによる抗ウイルス薬の探索を行っている。本年度では、複合体形成を阻害するいくつかの化合物を同定した。また、他の部分構造も決定することができ、この部位に関しても同様に酵素活性を阻害する候補化合物を探索する予定である。
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