2009 Fiscal Year Annual Research Report
中絶による心理的反応への心理的援助に関する探索的研究
Project/Area Number |
09J01017
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
管生 聖子 Osaka University, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 人工妊娠中絶 / 人工死産 / 心理的反応 / 周産期喪失 / 罪悪感 / PTSD / 抑うつ / 心理的ケア |
Research Abstract |
これまでの周産期の死に関する研究では、流産・死産においての心理的諸問題を明らかにする、またそれらに対するアプローチに関心がよせられ研究が進められてきた。しかし、同じ周産期の死でもある人工妊娠中絶にまつわる心理的な問題に関する研究はほとんどされてこなかったことから,本年度,本研究においては,医学的適応による人工妊娠中絶経験者の心理的反応がいかなるものか捉えるため,質問紙調査およびインタビュー調査を行った。 質問紙調査はIES-R及びBDIを使用し、PTSDの可能性及び抑うつ状態の程度を検討した。インタビューは1時間半~2時間の半構造化面接を行い、承諾を得て録音した。それらを逐語として文字におこしそれらを考察した。 結果、質問紙の数値からはPTSDの可能性や抑うつ状態に関してその傾向はみられるケースがあった。しかし、インタビューの語りなどを考察すると、その数値のみでPTSDの可能性を示唆することは危険であり、悲嘆反応も視野に入れ、引き続き検討する余地があると言える。 インタビューにおいては、妊娠の中断を自ら選択するという部分で死産や流産とは異なるという思いを持ち、自らの選択への罪悪感を強く持っていることが語られた。また経済的な理由などの社会的理由による中絶とは区別するため、当事者は人工死産という表現を用いることが多かった。児への愛情、児をとりまく様々な人間関係における思いが語られ,決断までの葛藤や苦悩,決断後の迷いなどが語られた。また、心理的・身体的反応が引き起こされたということが報告された。 実際の現場において、医療従事者は当事者の内的世界がどのようであるかについて教育されることが少ないため、具体的な対応などにいつも戸惑いを感じ困惑しているのが現状である。本研究の成果は遺伝診断等が進歩する現代社会において非常に意義深いものとなると思われる。
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Research Products
(2 results)