2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J01038
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
片岡 耕平 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 穢観念 / 秩序意識 / 天皇認識 / 日本中世史 |
Research Abstract |
本研究の全体の目的は、穢観念のあり方を通して、日本中世の社会構造の特質を明らかにすることである。(1)天皇をめぐる認識のあり方、(2)差別意識のあり方、を確認した上で、(1)を核とする<われわれ>意識、それは現在のいわゆるナショナリズムの原型となる意識であると想定しているが、の形成過程を明らかにすることを最終的な目的とする。<われわれ>とは、<他者>の存在を前提とする関係概念であるから、<われわれ>意識の形成を<他者>の排除という視点から解明することができるであろう。そこに(2)を確認する意味があると言える。この最終的な目的を3年間で達成するために、1年目の今年度は、基礎的な作業を行うことを目標としていた。すなわち、穢をめぐる史料を可能な限り探索し、それに基づいて全体的な理論の枠組みについての見通しを得ることである。史料の探索は、平安時代からはじまって、鎌倉時代、室町時代前期までの貴族の日記、文書群について行った。その結果、まず、穢の反対概念は、京都周辺の有力な神社に祀られた神々であったことが明らかになった。従来、それを天皇の身体と想定する説が有力であったが、それは誤りである。天皇は、神々に対して、その清浄を穢から守る責任を負っており、その責任が果たせなかった時には、神々からの譴責を被る。その譴責は、災害として表出することになっており、天皇は、神慮をコントロールして災害を解消できる唯一無二の存在と認識されていた。天皇の統治下にある人々には、穢を神々に及ぼさない努力が求められており、それを当時の人々は「神国」に生きる人間の責務であると考えていた。神国意識は、文字通り国意識の一形態であり、現在のナショナリズムへとつながる<われわれ>意識と認定して良いと思う。最終的な目的に達する糸口をつかむことができたと言える。
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Research Products
(1 results)