2010 Fiscal Year Annual Research Report
社会性ハダニにおける攻撃性の異なる2型の分化・維持機構の解明
Project/Area Number |
09J01045
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
佐藤 幸恵 独立行政法人農業環境技術研究所, 生物多様性研究領域, 特別研究員(PD)
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Keywords | ススキスゴモリハダニ / 2型 / 分化機構 / 維持機構 / 社会性 / 攻撃性 / 動物生態学 |
Research Abstract |
1.前年度に採集したススキスゴモリハダニ個体群の系統関係を解析すべく取り組んでいたマイクロサテライトマーカーの開発に関しては、進展がえられなかった。しかし、受入研究者の協力の下、核にコードされた遺伝子の部分配列を用いて、系統関係をある程度解明することができた。昨年度のオスの形態(第1脚の相対長)と行動(オス同士の攻撃性)の解析結果からは、ススキスゴモリハダニにはこれまで知られていたHG型とLW型の他に第3の型が存在すること、そしてこの第3の型は形態的にも行動的にもHG型とLW型の中間的形質をもち、南方(琉球諸島や台湾)に分布することから、計画当初に想定していたHG型とLW型の祖先的集団であると推測されていた。しかし、今回えられた分子系統樹からはこの第3の型は一つのまとまった集団ではなく、HG型と近縁な集団とLW型と近縁な集団からなることがわかった。現在、1.2kbp程度解読し系統解析を行っているが、解読領域を広げることにより、もっとはっきりした進化の歴史推定を行うことができると考えている。 2.HG型とLW型には不完全ながらも比較的強い不和合性が検出されている。今回、交配実験によりこれら2型と第3の型の生殖的関係を調査したところ、第3の型はHG型・LW型ともある程度交配可能であることが明らかとなった。この和合性は一方向であったため、細胞内共生菌が生殖的関係に影響している可能性が考えられるが、これまでハダニ類で感染が報告されている Wolbachia、Cardinium、Spiroplasmaの感染の有無をPCR法にて調査したところ、感染は確認されなかった。そのため、この生殖的関係は遺伝的なものであり、本種の分化・維持機構を推察する上で重要な情報だと考えられた。
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Research Products
(6 results)