2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J01064
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
駒野 和雄 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 抗生物質 / エンジイン / マデュロペプチンクロモフォア / 全合成 / 構造改訂 / アトロプ異性体 / DNA / 政宗-バーグマン芳香環化 |
Research Abstract |
抗腫瘍性抗生物質マデュロペプチンの活性本体で、9員環エンジイン化合物の1つであるマデュロペプチンクロモフォアの全合成研究を行った。その結果、マデュロペプチンクロモフォアの提出構造の全合成に世界で初めて成功し、また、全合成を達成したことにより提出構造が誤っていることを明らかにした。得られた化合物のスペクトルデータをもとにクロモフォアの真の構造を、糖がエナンチオマーとなる化合物であると推定し、これを全合成したところ、天然物と一致する化合物を得た。このようにして初めて(-)-マデュロペプチンクロモフォアの全合成と構造改訂に成功した。また、そのアトロプ異性についても調査し、(-)-マデュロペプチンクロモフォアは室温で平衡となる2種のアトロプ異性混合物であり、その存在比は溶媒に依存することを明らかにした。 全合成と構造改訂に成功したが、天然物の絶対立体配置はいまだ未決定だった。天然物はすでに失われており、新たに旋光度やCDスペクトルを測定することはできない。しかし天然物を単離したSchroederらは、天然のクロモフォアが塩基配列選択的なDNA切断活性を持つことを報告している。このため、全合成した(-)-マデュロペプチンクロモフォアを用いてDNA切断活性を調べることで、天然物の絶対立体配置を推定できるのではないかと考えた。 Schroederらの手法に従い、ΦX174DNAを用いてDNA切断実験を行った。その結果、合成した(-)-マデュロペプチンクロモフォアはpH5~8の範囲でΦX174DNAを切断しないことが分かった。この結果より、真の天然物はエナンチオマーか、もしくはSchroederらの実験において別の活性種が含まれていた可能性が考えられる。また、合成したクロモフォアのメタノール脱離に伴う政宗-バーグマン芳香環化反応も試みたが、塩基条件、酸条件いずれも反応せず、(-)-マデュロペプチンクロモフォアはDNA切断活性を持たないことが示唆された。
|
Research Products
(3 results)