Research Abstract |
粒径や形状のバラツキが精緻に抑制された単分散微粒子は,均一性の高い粒子特性をもつことから,これを粉体素材として用いることで材料品質のバラツキが抑制され,従来品質を凌ぐ高品位材の市場供給が可能となる.したがって,単分散微粒子は工業的に大きなメリットを有するが,晶析プロセスを利用して単分散微粒子を作製する場合,「核生成期と成長期の明確な分離」や「凝集の抑止」等,製法上の課題を克服する必要がある.これに対し筆者らは,晶析装置の形式(ダブルフィードによる半回分式撹拌槽)および高分子添加剤(ポリエチレンイミン)を適宜選定し,製造条件を最適化することで,凝集の少ない,数ミクロンサイズの硫酸ストロンチウム単分散微粒子を,難しい変調操作を用いずに再現良く得ることに成功した.さらに,晶析される結晶品質(粒径,粒径分布幅,形状など)が,高分子添加剤の錯形成サイトである官能基の種類や自身の分子量,ならびに高分子鎖構造(直鎖構造と枝分かれ構造)などの,いわゆる「添加剤特性」の影響を受けることから,ポリエチレンイミンの添加量や分子量を変動させて晶析試験を行い,凝集の抑止された単分散微粒子が再現良く得られる操作範囲を明らかにした.今後研究を展開することで,「所望の品位をもつ結晶を選択的に晶析するには,いかなる類の添加剤を用いればよいか.」といった工学的知見が,工業的な要請に即する水準で得られるものと考えられる.なお,添加剤に用いたポリエチレンイミンは,水処理プロセスにおける重金属の錯化剤やフロックの分散剤として用いられることが多く,これらの性質や用途を物質創製に積極的に応用した点に,筆者らの独創性があると考えている.今年度の研究内容は,5件の学術論文,2件の国際会議,1件の国内学会において発表がなされた.
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