2009 Fiscal Year Annual Research Report
半屈曲高分子鎖の折り畳み転移:実験・理論両面からのアプローチ
Project/Area Number |
09J01091
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
樋口 祐次 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ヌクレオソーム / DNA / 構造転移 / 階層性 / シミュレーション |
Research Abstract |
真核生物のDNAは小さく折り畳まれて細胞内に収納されている。その最も基礎的な構造であるヌクレオソームは、DNAがたんぱく質に巻きついてできる構造である。昨年度はヌクレオソーム構造に関して疎視化したモデル(堅さを持った鎖と引力を持った球の二者)を用いて集中して研究を行った。ヌクレオソーム構造の安定性は遺伝子発現の活性などの生体機能と深い相関があると予想されており、生物学的にも重要な課題である。本研究ではヌクレオソーム構造の安定性における、ねじれの効果に注目した。DNAの両端が固定された時にはDNAの構造が幾何学的に制限され、ねじれの効果があらわれることが予想される。このねじれの効果がヌクレオソーム構造の安定性にどのように寄与をするか、シミュレーションと簡単な現象論で迫った。 DNAを模した鎖の両端を固定し、そのうちの片端をねじった。初期条件には、鎖がたんぱく質を模したコアに自然な形で二周巻きついた構造をおいた。鎖を一周ねじると、鎖がコアからはずれ、安定な構造は鎖がコアを一周巻く構造へと変化した。さらに一周ねじると鎖は再びコアに巻きつき、安定な構造は鎖がコアを二周巻きつく構造となった。これは両端固定という幾何学的制限から、ねじれのストレスを緩和するために鎖の構造(巻き数)が遷移したということである。この様に、ヌクレオソーム構造ではねじれのストレスがその基本構造の安定性を決める支配的な要素であることを見出した。鎖の堅さ・鎖とコアの引力・ねじれのエネルギーを取り入れた現象論を議論し、シミュレーション結果と同様の結果を得た。また、伸張操作を行った時の構造の安定性・力学応答を調べると、鎖のねじれ度合いにより安定性・力学応答が大きく変化することが明らかになった。この結果は前述した安定構造の議論とよく一致している。また、力学応答の結果は実験でも確かめることが可能な量であり、意義のある結果となった。
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Research Products
(6 results)