2011 Fiscal Year Annual Research Report
微小なノイズがもたらす進化への大きなインパクトに関する理論的研究
Project/Area Number |
09J01131
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
上原 隆司 静岡大学, 創造科学技術大学院, 特任助教
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Keywords | ゲーム理論 / 協力行動 / 連合闘争 / サイズ成長モデル / 弱い者いじめ / 害虫防除 / フェロモントラップ / 拡散モデル |
Research Abstract |
群れを作る動物で、どのような場合に群れ個体間で協力して外敵を追い払うのかを調べるため、進化ゲーム理論やコンピュータシミュレーションを用いて解析を行った。2対1の状況で個体の強さが異なるときに、勝ち取った資源をグループメンバー間で均等に分け合う時にはペアの力がほどほどに釣り合っている時に協力が起こるが、強い方が多く分け前をもらえる状況では弱い方の協力が得られにくく、協力が起こるための条件がよりシビアになることが分かった。一方で努力量に応じて分け前が増える時には、弱いペアからの協力が得られやすく、ほとんど単一で敵に対峙する状況が生まれないことも分かった。 同一空間に棲息する個体間では資源の奪い合いが生じ、その結果個体間でのサイズ差が生じることがある。特に魚類では1個体だけ大きくなったり、等間隔サイズが維持されたりなど、様々なサイズ構造が現れる。これを理解するために個体間での餌獲得競争とサイズ成長を組み合わせたシミュレーションモデルを構築し、個体間での攻撃の構造とその結果生じるサイズ構造との関係を調べた。結果、各個体が同様な成長を見せる場合、一個体だけが大きくなる場合、等間隔サイズが維持される場合の3つが現れることが分かったが、特に等間隔サイズは上位の者が自分より下位の者をいじめる「弱い者いじめ」によって起こる可能性があると分かった。 またサツマイモの害虫であるアリモドキゾウムシのフェロモントラップの有効範囲を拡散モデルを用いて推定した。これまでフェロモントラップの有効範囲は数十メートルと推定されてきたが、狭い実験場を用いたにもかかわらず実験での捕獲率は低く、本当にそのように広い有効範囲の推定値が正しいのかは疑問である。アリモドキゾウムシのオスの一部がまれに一日に数百メートルも飛んで移動することもあることを考慮した結果、フェロモントラップの有効範囲はもっと狭いと予想された。
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