2009 Fiscal Year Annual Research Report
同質財市場および近似的同質財市場における価格競争理論の研究
Project/Area Number |
09J01139
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平田 大祐 The University of Tokyo, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 価格競争 / 寡占理論 / 産業組織論 |
Research Abstract |
4月以降、主に以下の2つの研究を行った。 まず同質財市場における、生産量に上限(capacity constraint)がある場合の価格競争理論の研究、"Asymmetric Bertrand-Edgeworth Oligopoly and Mergers"を昨年度から継続して行い、学術誌The B.E.Journal of Theoretical Economicsに発表した。本研究では、非対称なcapacityを持つ3企業が競争する市場を分析し、非対称な寡占市場では、対称な市場のみを分析した既存研究とは異なる性質を持った均衡が存在することを示した。特に重要な貢献は以下の2点である。第一の貢献は、非対称な寡占においては小さい企業ほど高い価格をつける誘引が強い場合があることを示した点である。これは既存研究にはない、価格競争における戦略的誘引に関する新しい知見である。第二の貢献として、本研究は新しい種類の合併パラドックスの存在を示し、寡占市場における水平的統合の研究に対しても新たな理論的知見を与えた。 さらに、東京大学社会科学研究所の松村敏弘教授と以下の研究を行い、論文"On the Uniqueness of Bertrand Equilibrium"(東京大学社会科学研究所ディスカッションペーパー,F-148)としてまとめた。本研究は、規制等の理由で各企業が直面している需要を全て満たさなければならない場合の価格競争を理論的に分析したものである。既存研究では、そのような仮定の下では同質財市場に均衡が無限に存在することが知られていた。本研究はこの結果が「同質財」という単純化のための仮定に依存したものであり、わずかな製品差別化に対して頑健な均衡は唯一であることを示した。同質財の仮定は、わずかでも価格差があれば全ての消費者が低い価格の製品を購入しようとする、という極端な仮定である。従って、本研究の「わずかな製品差別化があっても成り立つか否か」という頑健性の視点は、理論モデルの妥当性を考える上で重要である。本研究は、同質財市場においてそのような頑健性を有する唯一の均衡は各企業が完全競争価格を設定するものであることを示した。
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Research Products
(1 results)