2009 Fiscal Year Annual Research Report
主体と対象の関係から見る創造の過程と質の研究―南方熊楠の「やりあて」を中心に―
Project/Area Number |
09J01168
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
唐澤 太輔 Waseda University, 社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 南方熊楠 / やりあて / 生命倫理 / 自己-他者 / C.G.ユング / ロンドン / セクシャリティ / 深層心理学 |
Research Abstract |
研究・年次計画の「熊楠の書簡・日記を1902~1904年を重点的に調べる」という課題については、『全集』(平凡社)、『日記』(八坂書房)における文献調査は勿論のこと、和歌山県田辺市の南方熊楠顕彰館に赴き、1914~1925年の未だ出版されていない日記の現物及びマイクロフィルム、並びに岡本清造氏の翻刻版を閲覧・調査することができた。この調査・研究によって、熊楠の「やりあて」(熊楠の造語:偶然の域を超えた発見や発明)に関する記述を多くサンプリングすることができた。今後このサンプルを基に「やりあて」についてさらに詳細な検証が可能になると思われる。 2010年2月には、London univ.SOASで開催されたシンポジウム「Minakata Kumagusu and London」に参加した。各国の熊楠及び土宜法竜研究者の発表を聴講するだけでなくディスカッション等を通じ、特に熊楠のセクシャリティの問題について意見交換を行うことができた。 フィールドワークとしては、熊楠が数年滞在した那智山・大坂屋を訪れた他、Londonでは大英博物館(熊楠が寄贈した仏像等を見学)や熊楠の下宿跡などを訪れた。 2009年9月より、哲学雑誌『ロゴスドン』において「生命倫理再考」という題目での連載が決定した。毎月熊楠の生命観等を1600字程度で寄稿している。連載終了後(全60回)論考は書籍化の予定である。また2010年8月発刊予定の『トランスパーソナル学研究vol,11』において、論文「南方曼陀羅への深層心理学的アプローチ-ユング心理学を手がかりに-」の掲載が決定している。これまでの「南方曼陀羅」の解釈にはなかった「マンダラが熊楠の深層心理に与えた影響」という視点から、C.G.ユングのいわゆる「マンダラ論」を基に研究を行った。 さらに、2009年1月9日に中外日報社主催の第5回涙骨賞・最優秀賞を受賞した論文「ひらめきと創造的活動のプロセス-南方熊楠の「やりあて」に関する考察を中心に-」に対し(及び今後の日本学術振興会特別研究員における活躍への期待を含めて)早稲田大学より「小野梓記念学術賞」を授与された(2010年3月25日)。
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Research Products
(2 results)