2009 Fiscal Year Annual Research Report
ニュートリノで探る高エネルギー天体現象における高温・高密度物質の物理
Project/Area Number |
09J01189
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中里 健一郎 Kyoto University, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 高エネルギー天体現象 / ニュートリノ天文学 / 高温・高密度物質 / 重力崩壊 / ブラックホール形成 / ハドロン物理 / クォーク相転移 |
Research Abstract |
近年、ガンマ線バーストや極超新星といったブラックホール形成を伴うと推測される高エネルギー天体現象が話題を呼んでいるが、その中心部では非常に高温で高密度な状態になっていてミクロな物理過程がマクロな天体現象に影響を与えていると考えられている。本研究課題では、こういった高密度天体内部の現象を探る際にはニュートリノによる観測が有用であるという観点から研究を進めている。 本年度はブラックホール形成の過程においてハイペロンやπ粒子が出現する場合やクォーク相転移が起こる場合に現れる影響を、重力崩壊の数値シミュレーションによって調べた。さらにそれに伴って放出されるニュートリノの光度やスペクトルを計算し、既存のニュートリノ検出器(スーパーカミオカンデ)でどれくらいのイベントが受かるかをニュートリノ振動まで考慮して求めた。 結果として、ハイペロンが出現する場合にはブラックホール形成が促進され、この効果は通常の原子核物質の性質の不定性を考慮しても、ニュートリノの観測によって統計的に有為に判別できるほど顕著なものであることが分かった。一方、π粒子が出現する場合やクォーク相転移が起こる場合でも、同様にブラックホール形成が促進されるが、ハイペロンが出現する場合ほど劇的な違いは見られないことも分かった。 以上の研究は原子核の飽和密度よりも高い密度領域における物理に関するものであったが、原子核物質の性質は飽和密度以下の領域でも不定性が大きく、特に密度が飽和密度の数10%程度になると非球状原子核が現れると考えられている。さらに原子核の形状により、高密度天体内部でのニュートリノの透過率に違いが現れると指摘されているため、原子核がどのような形状になるかを理解することは重要な問題である。それに対して今回は、高分子物理学とのアナロジーからこの問題を再考し、これまで考えられてこなかった形状の原子核が現れうることを指摘した。
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