2010 Fiscal Year Annual Research Report
イタリア・ルネサンス美術における「公」「私」概念の再考
Project/Area Number |
09J01191
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河田 淳 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イタリア / ルネサンス / 「公」「私」 / 聖人 / 共同体 / ペスト / 信徒会 / 祭壇画 |
Research Abstract |
今年度は、研究課題「イタリア・ルネサンス美術における『公』『私』概念」を基礎づけるために昨年度現地にて収集してきた一次資料を分析しつつ、そこで得られた結果を裏付けるための、翌年度に計画している海外でのフィールドワークに取り組む下準備を重点的に行った。 本研究では、イタリア・ルネサンス美術を特徴づける宗教画でも、聖人伝で語られ、祭壇画などで描かれた聖人がどのようなイメージとされており、その聖人像に対してどのような信仰が捧げられたのか、そして、こうした信仰に基づいて、どのような表象がさらに生産されたのかということを問題とした。この一連のサイクルに着目し、分析するにあたって、本年度はとりわけ、ペスト患者をはじめとする病人を守護すると信じられてきた聖人(キリスト、聖母、セバスティアヌス、クリストフォロス、ロクスなど)に着目し、研究を行ってきた。こうした聖人は初期キリスト教時代から受け継がれてきたタイプと1347年のペスト勃発の際に新たに創り出されたタイプ、そして伝統を引き継ぎつつも創りなおされたタイプがあげられる。 こうした聖人たちに着目することは、当時彼らに信仰を捧げてきた人びとが、信徒会という公的な団体を通して、人びとがどのようにして、ひとつの共同体として凝縮していたのかを明らかにすることでもある。結果として「私」性の強い「公」とは、イタリア・ルネサンスにおいてどのようなものだったのかという、翌年度につながる問いにたどりつくこととなったのである。
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