2009 Fiscal Year Annual Research Report
イタリア・ルネサンス美術における「公」「私」概念の再考
Project/Area Number |
09J01191
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河田 淳 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | イタリア / ルネサンス美術 / 「公」「私」概念 / 聖人 / 共同体 |
Research Abstract |
今年度は、課題「イタリア・ルネサンス美術における『公』『私』概念」を遂行する上で欠かせない基礎的な研究と、その研究結果を検証し、裏付けるため海外でのフィールドワークに取り組んだ。具体的には、イタリア・ルネサンス美術の根幹ともいえる宗教画における聖人のさまざまな表象の形態と表象された聖人像への信仰、そして、その信仰に基づく新たなる表象の再生産のサイクルに着目し、分析を試みた。宗教画はイタリア・ルネサンス期において、一族から都市共同体とった様々な団体から注文され、制作されたものだが、そこにおいて注文主全員が描かれることは稀で、誰かひとりか何らかのシンボルが代理で描かれ、その注文主を代理していることがほとんどである。そのため、とりわけ、この「代表者」やシンボルがどう描かれているのかを詳細に調べることで、研究課題である『公』『私』概念の様相が浮き彫りにできると考えたからである。研究方法としてはまず、イタリアの都市ごとの聖人とそのアトリビュート、列聖年などを探り、一覧表にしたうえで、その共通点と相違点を探った。そして、ここから浮き彫りにできた各都市に独特の聖人の表象がいかに変遷していったのかを探ることが詳細な研究に繋がると考えた。そのため、2010年3月9日から3月19日にわたって、ボローニャ、シエナ、サン・ジミニャーノ、フィレンツェなどのイタリア諸都市を巡り、調査を行った。今後は、この調査で入手した文献を読み解き、さらなる調査が必要である。
|