2009 Fiscal Year Annual Research Report
近代教育の再考と現代教育の再生-ドイツにおける学校終日制化をめぐる葛藤に着目して
Project/Area Number |
09J01192
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
布川 あゆみ Hitotsubashi University, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ドイツ / ヨーロッパ / 国際比較・国際標準化 / 学校終日制化 / 学力 / グローバル化 / 教育改革 / 学校改革 |
Research Abstract |
ドイツはこれまで半日学校として知られてきたが、「PISAショック」以降ドイツ全土にて学校終日制化が進められている。平成21年度はPISAの州間比較において、「もっとも学力の低い州」として知られたブレーメンの二つの異なるタイプの終日学校においてフィールドワークを実施した。その結果、学校終日制化という新しい制度はこれまで教育制度にうまく適応していた学校(エリート校)だけでなく、制度との間に距離があった学校(問題校)をも適応させていく、ダイナミックな制度であることがみえてきた。そしてそこには、終日学校政策が連邦政府主導であることが大きな影響をもっていることを把握した。さらに、「PISAショック」後に終日学校普及率が100%と急速に終日制化が進んだベルリンでの調査を進めた。ここでは、ベルリンの教育学術局・終日学校運営担当課の職員2名へのインタビュー、また3つの学校訪問を行った。ベルリンでの現地調査を行ったことで、終日学校普及率100%の「からくり」を把握した。 現地調査を通じて学校終日制化をめぐってみられる葛藤は、新しい制度の廃止を念頭に抱かれているのではなく、学校終日制化という新しい制度に上手く適応していくことをおもって抱かれているものであることがみえてきた。「PSIAショック」以前においては、学校終日制化は到底「受け入れられない制度」であったことを考えると、改めてドイツが今学校終日制化を「受け入れざるを得ない」状況へと向かっているその背景事情をより丹念に分析していく必要があることが明らかとなった。終日学校政策が単に学力向上を目的として展開されているわけではないことが改めて強調される。終日学校政策を論じるうえでは国際比較、国際標準化という軸を新たにたてなければならないことがみえてきた。
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