2010 Fiscal Year Annual Research Report
近代教育の再考と現代教育の再生-ドイツにおける学校終日制化をめぐる葛藤に着目して
Project/Area Number |
09J01192
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
布川 あゆみ 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ドイツ / 終日学校 / 学校改革 / 学力 / 親の権利 / ドイツ民主共和国(DDR) / 社会教育 / 学校外教育 |
Research Abstract |
ドイツはこれまで半日学校として知られてきたが、2001年末の「PISAショック」以降、ドイツ全土にて学校終日制化が進められている。平成21年度においては、2つの異なるタイプの学校を中心にフィールドワークを行ったことで、ドイツにおいて学校終日制化は到底「受け入れられない制度」から、「受け入れざるを得ない制度」へと向かっていることが明らかになった。 そのため、平成22年度においては「受け入れざるを得ない」というその葛藤部分をより丹念にみていくことを課題に掲げた。そして課題解決に向けて、以下二つのアプローチから取り組んだ。ひとつは、ドイツでこれまで半日学校体制がとられてきた歴史的背景に目を向けることである。もうひとつが、学校外教育(社会教育)のありかたが、どのように変容しつつあるのかをおさえることである。 この二つのアプローチをとるにあたっては、歴史的書物や諸資料の収集をドイツにおいて行う必要があり、約2週間ドイツに滞在し、ベルリン国立図書館やドイツ教育史研究所図書館などを中心に、文献・諸資料の収集にあたった。 その結果、2つのことが明らかとなった。まず、ドイツの場合、旧西ドイツと旧東ドイツの間にあった政治的対立が、終日学校をめぐってもみられ、それが現在の終日学校政策の展開において葛藤を引き起こす大きな要因になっていること。次に、半日学校体制下において広範にドイツで発展してきた学校外教育(社会教育)が、家族のあり方の変容や女性の社会進出を背景に、既存の独立形態では成り立たず、学校に自らを組み込んでいく、すなわち終日学校の拡大にかかわっていかざるをえない状況にあること、以上2つのことが見えてきた。
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