2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J01209
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大森 亮介 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 理論疫学 / 数理生物学 / コイヘルペス |
Research Abstract |
ウイルスの抗原性は多様な原因により決定され、温度などの環境要因からも大きく影響を受ける。これまでの進化学や理論疫学での感染症の研究では環境変動の感染症流行に与える影響を詳細に調べたものは少なく、宿主免疫の進化を考える上で、この環境要因による影響を考慮することは必要不可欠である。このため、環境要因の変化による感染症の流行をコイヘルペスウイルスを例に解析した。コイヘルペスは感染した個体の80%以上が死亡する非常に毒性の強い感染症で水産業界に多大な被害を与えた。また、コイヘルペスの流行には季節性がある事が知られており、これは感染が起きる水温の範囲が決まっている為である。この特性を利用し、感染が確認された後に水温を感染が起きない様な水温に人工的に変化させ、流行を抑制する治療法が考案された。この治療法を評価し最適な治療スケジュールを決定する為に、水温と感染率の関係性の実験データ(Yuasa et al. 2008)をもとに養殖場内の鯉の集団での感染を記述する数理モデルを構築し、解析を行った。コイヘルペスの流行の季節変動性は感染から発病までの期間、発病から死亡または回復するまでの期間の長さが水温によって変わる事に起因する(Yuasa et al. 2008)。また、水温を人工的に変える治療法は場合により治療を行っていない時よりも被害が増大することも明らかになった。ここから、感染症抑制の為の環境要因のコントロールは計画的かつ正確に行われる必要があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
インフルエンザを例にしたウイルスの抗原性と宿主免疫の共進化の解析は、将来のインフルエンザ予測可能性の証明という結果を得、学術雑誌に投稿した。その結果を踏まえ、さらに現実的な数理モデル構築に必要な環境要因の解析を行えた事は計画以上の進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
インフルエンザだけでなく、デング熱、マラリアといったあらゆる感染症に対応すべく、それぞれの感染症に対応した数理モデルの構築及び解析を行うと共に、さらに詳細な数理モデルの構築をすすめる。例としては、体内でのウイルス増殖過程を考慮し、その増殖過程の変化がヒト集団全体の流行動態にどのような影響を及ぼすか解析する。
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Research Products
(3 results)