2011 Fiscal Year Annual Research Report
巨大地震に伴う重力変化と地球の粘弾性構造―重力観測衛星GRACEを用いた研究
Project/Area Number |
09J01223
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長谷川 崇 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | GRACE / 余効滑り / 粘弾性緩和 / 地震に伴う重力変化 / 2004年スマトラ地震 / 粘弾性球対称地球でもDislocation理論 / 余効変動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、重力観測衛星GRACEから得られる地震に伴う重力変化から、断層滑りと地球の粘弾性構造を求めることである。前年度は、地震前後のGRACE及びGPSデータから、余効滑りの時空間発展とマントルの粘性率を同時にインバージョン推定する計算スキームを作成し、2004年スマトラ地震に伴うGRACE及びGPSデータから、マントルの粘性率と余効滑りモデルを求めることに成功した。一方で、用いたGRACEデータの誤差特性から、GRACEデータがM9級の巨大地震にしか応用できないことも示された。 そこで、平成23年度は、米国NASAへ出張し、GRACE Level 1Bデータの解析を行った。Level1Bデータは、昨年まで用いたLevel2データよりも低次のプロダクトで、データ処理が複雑な一方、震源地域に適した重力場推定法を選ぶことができるため、重力変化をより高い分解能で得ることができる。申請者は、GRACE Level1Bデータから重力場を求める基本的な計算コードの作成と、それを応用した次期重力観測衛星DECIGO Pathfinderの重力観測の数値シミュレーションを行った。欧米の一部の機関しか保有しないLevel1Bデータの解析手法をこの課題で得たことは、先進的なデータ解析や将来の重力観測衛星の設計を可能とする点で重要性が高い。 また、課題実施最終年度として、研究を総括する論文を作成した。GRACEから得られる地震に伴う重力変化は、陸海域両方の地殻変動情報を反映するため、従来の地上観測では捉えられなかった余効変動の全体像をとらえ、GRACEと地上観測データを合わせて解くことで粘弾性緩和と余効滑りのシグナルを分離して求めることができることが明らかとなった。このことは、地球の粘弾性構造や余効滑りの時空間発展の推定に、GRACEデータが有用であることを示した点で、重要な成果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
重力観測衛星GRACEから得られる地震に伴う重力変化から断層滑りと地球の粘弾性構造を求めるという本研究の目的は達成された点、GRACEから得られる地震後の重力変化から余効変動をモデリングすることで、従来の地上地殻変動観測では分離することが難しい粘弾性緩和と余効滑りの影響を分離して求めることができることが明らかになり、GRACEデータの新しい応用分野が示せた点、これらの成果が日本測地学会第114回講演会をはじめとする複数の学会で発表された点、欧米の限られた研究機関しか保有しないGRACE Level1Bデータの解析手法を得た点は高く評価ができる。しかし、研究成果を総括した論文を、課題実施期間の終了日までに受理できなかった点で、若干のマイナス評価となった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果を総括した論文の受理を早急に目指す。
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Research Products
(6 results)