2010 Fiscal Year Annual Research Report
断層帯に存在する水と摩擦発熱が地震の破壊過程に与える影響
Project/Area Number |
09J01224
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浦田 優美 京都大学, 理学研究科質, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 摩擦熱による間隙圧上昇 / 動的破壊過程 / 数値計算 |
Research Abstract |
断層帯に存在する流体が地震時に果たす重要な役割のひとつに、断層運動に伴う摩擦発熱によって断層帯に存在する間隙流体の圧力が上昇し、断層の強度を大きく低下させる、というものがある。本研究の目的は、この摩擦熱による間隙圧上昇の機構が実際の地震でどの程度効いているのかを明らかにすること、およびこの機構のモデルをより現実的なものに改良することである。 今年度は、自身がこれまで行ってきた、地震時のすべりが複数の断層セグメントに広がって地震の規模が大きくなる過程についての研究をまとめ、国際学会誌に投稿した。現在査読中である。 また、摩擦熱による間隙圧上昇の機構のモデルをより現実的なものに改良するための研究を新たに始めた。地震時の摩擦発熱によって間隙流体の温度や圧力が上昇すると、その流体が相変化する可能性がある。自身は、摩擦発熱による間隙圧上昇を組み込んだ動的破壊過程の数値実験を行い、間隙水の温度、圧力上昇に伴って相変化が起こりうるかどうかを調べ、また、その相変化が破壊過程にどのような影響を与える可能性があるかを議論した。数値実験から、地震時に間隙水が液相から超臨界に相変化する可能性があること、また、深いほど、小さいすべり量で相変化が起こりうることがわかった。間隙水が相変化すると、水の粘性率、等温圧縮率、熱膨張率といった、間隙圧上昇の機構に関係する物性値が変わる。それら物性値の変化によって、温度上昇に対する間隙圧の上がり方は鈍くなるが、水の拡散速度は小さくなる。相変化によって、間隙圧上昇の機構が促進されるのか抑制されるのかは、相変化に伴うこれら物性値の変化を数値計算に組み込んで調べる必要があり、今後の重要な課題である。この成果を国内外の学会で発表した。
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Research Products
(7 results)