2010 Fiscal Year Annual Research Report
シュードタキライトを含む超塩基性塑性剪断帯の研究:上部マントル震源過程の解明へ
Project/Area Number |
09J01260
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上田 匡将 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 地震学 / 岩石学 / シュードタキライト / 脆性-延性遷移 / かんらん岩 / 国際研究者交流 / 国際情報交換 / イタリア |
Research Abstract |
イタリアのBalmuccia岩体の研究で、調査地域のシュードタキライトにはメルト由来組織をよく残したものと、完晶質でウルトラマイロナイト様の組織を呈するもの(mylonitic pseudotachylyte、以下M-PSTと略す)、メルト由来組織を残しつつも変形集中域に部分的にM-PST様組織を呈する中間的なものがあることが判明していた。この中間的なタイプの微細組織を走査型電子顕微鏡によって観察したところ、断層脈内のかんらん石結晶の特定の方向の外縁部に、かんらん石を置換して斜方輝石結晶集合体が発達する組織(以下、同組織をOpxフリンジと呼ぶ)が見出された。脈の部位によらずOpxフリンジの向きがほぼ揃っていることは、この組織がシュードタキライトの被った非静水圧的応力を示していることを示唆する。Opxフリンジは大きなかんらん石結晶の外縁部では厚く、小さなかんらん石結晶の外縁部では薄い傾向を持っていたが、M-PST中にもポーフィロクラストにはOpxフリンジ組織が発達しており、M-PSTがOpxフリンジ形成反応を伴って変形・形成したことが明らかになった。M-PSTの様な極細粒断層物質の脆性-延性遷移領域での変形機構は、比較的大きな地震の震源域となる地震発生領域下部での断層の強度や変形挙動に影響すると考えられるが、これまでOpxフリンジ類似の変形組織は報告されていなかった。脆性-延性領域での震源過程の解明に、非静水圧的応力とOpxフリンジを形成するような局所的化学反応とのカップリングを解明せねばならないという新たな問題設定がなされることとなった。 研究調査対象はかんらん岩体中の小断層群であるが、これら断層群は前年度までの研究で、かんらん岩の脆性-延性遷移領域で形成されたことが明らかになっている。当該年度の野外調査では、小断層の末端部で壁岩のかんらん岩の構造(輝岩岩脈のレイヤー)が局所的に湾曲している領域(露頭)が発見された。地震性の断層破壊の前駆現象を示している可能性があり、今後の詳細な研究が必要である。
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Research Products
(4 results)