2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J01263
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻 かおる Kyoto University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 雑居性異株植物 / 植物の性 / 化学防御 / 植食者 / 産卵選択性 |
Research Abstract |
雌雄が分化している植物と植食者間で生じる相互作用の一つに、雌よりも雄の植物の方が食害されやすいという現象がある。この現象は花の形質や性表現の進化と関係していると考えられるが、適応的な重要性についてはほとんど明らかになっていない。本研究では、植物の性と植食者の産卵選択性、植物の性と植食者の適応度、植物の性と化学防御の関係を明らかにすることを目的とした。これらの関係を明らかにするため、雑居性異株植物であるヒサカキ(Eurya japonica)とその花蕾食のソトシロオビナミシャク(Chloroclystis excisa)の相互作用系を用いて観察、実験を行った。野外において、ソトシロオビナミシャクは雄または両性のヒサカキの蕾を食害しており、雌のヒサカキの蕾での食害は観察されなかった。また、実験室下において、雌成虫は産卵基質として雌より雄のヒサカキをより多く選択し、雌のヒサカキの蕾を摂食したほぼ全ての幼虫は死亡した。ヒサカキの雌花の萼を除去し幼虫に与えると幼虫は死亡することなく成長する。このことから、幼虫に死亡要因は蕾を覆っている萼にあると分かった。雌の萼は雄の萼よりも、多くの総フェノール、縮合タンニンを含んでいることも明らかとなった。これらの結果は、植食者に対する化学防御の性差が花の性差と関係して進化したこと、防御の低い性に対する植食者の選択性は防御形質の性差に応じて進化してきたことを示唆している。
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