2010 Fiscal Year Annual Research Report
跨境地域における社会変容と民族アイデンティティ -中国雲南省ラフ族の事例から
Project/Area Number |
09J01264
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
堀江 未央 京都大学, 東南アジア研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 文化人類学 / アイデンティティ / ジェンダー |
Research Abstract |
本年度の大きな研究実績は、本格的なフィールドワークで得られた知見と、平成21年度「大学院教育改革支援プログラム」共同研究「アジア・アフリカにおけるマイノリティの諸相-日常における葛藤や交渉へのまなざしから-」の報告書である。 まず、2010年4月に瀾滄ラフ族自治県で開催されたラフ族の祭日「葫蘆節」では、タイから伝統宗教派のラフが招待され、中国のラフ族表象に対する彼らの反応を見ることができた。特に、共産主義に抵触しないよう宗教色を脱色し、「文化」として展示されている「グシャ文化」(グシャとはラフ族の至高神)の像に対して、タイのラフたちが線香をあげ、祈りを捧げている姿は印象的であった。この内容は、上記の報告書にて論じた。 その後のフィールドワークで明らかになった点は主に3つある。第一に、「ラフオリ(ラフの伝統)」と呼ばれる現象について、精霊の駆除という伝統的な疾病治療が語られることが多いことが分かった。近代医療が普及してもこの手法はなくならず、むしろラフの伝統として、他民族と区別する指標となっていた。第二に、現地漢族とラフ族との関係性に着目するに至った。中国の支配民族として語られる遠い存在としての「漢族」とは異なり、現地漢族はラフ族と漢族の中間的存在と認識され、特殊な民族間関係が生まれていた。第三に、同じ民族間結婚でありながら、近年ラフ族女性の漢族への婚出が甚だしいことが分かった。これらの現象は、ラフ族の「伝統」観念と、漢族とラフ族との民族間関係とジェンダーという問題に整理でき、ミクロな視点からアイデンティティを捉えることを目指す本研究において、手応えのある調査ができた。
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Research Products
(1 results)