2009 Fiscal Year Annual Research Report
慣用表現の形式的・意味的変化に関する統合的分析モデルの構築
Project/Area Number |
09J01276
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土屋 智行 Kyoto University, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 慣用表現 / 定型表現 / 自然言語処理 / 第二言語習得 |
Research Abstract |
報告者は、当該年度を通し以下の研究成果を上げた。 一点目は、慣用表現の形式的な特徴をボトムアップ的に記述することで、慣用表現に特有の表現形式の存在を示したことである。辞書にリストアップされている慣用表現およびその周辺の表現を、言語処理の技術を援用することによって網羅的に収集し、形態的な分析をおこなった。これによって、直感的に判断できない慣用表現とことわざの境界が明らかとなった。 二点目には、構成要素の担う意味と表現全体の持つ意味が相互排他的にならないような意味記述の方法を用いたことが挙げられる。これまでの慣用表現の研究では、全体の意味をそのまま直感的に捉える方法でしか全体の意味を分析していなかった。しかし、報告者は形式的な記述を網羅的に行ったことに加え、全体の意味を構成要素の意味間の関係性から分析した。一つ一つの用例に対し、構成要素の意味と全体の意味との対応関係および構成要素同士の意味的な抽象性の違いなどを分析した。これによって、慣用表現の研究において弊害であった全体性と分析性の二律背反的な関係から抜け出す糸口を探った。 三点目として、言語処理や、慣用表現を含む定型表現に関する国際学会で関連分野の研究者と意見交換を行い、慣用表現の理論的な考察の土台をより具体化したことが挙げられる。慣用表現の言い換えや、それによる意味的な変化の理解は、認知科学のみならず、言語処理の領域においても大きな課題のひとつである。また、第二言語習得やバイリンガリズムの理論において定型表現の研究は重要な位置をしめつつある。報告者は、これらの関連分野との連携を視野に入れた、統合的な分析モデルを具体化しており、実証化に向けた準備を進めている。 一点目、二点目に関しては、当該年度に論文が掲載された。三点目に関しては、学会でモデルの基盤となる現象について発表することがすでに予定されている。
|
Research Products
(3 results)