Research Abstract |
1.Keller-Segel方程式系の後方自己相似解の非存在 走化性による細胞性粘菌の集合体形成の数学的モデルであるKeller-Segel方程式に関して,その解の特異性の研究を行った.特に,時間局所解の延長可能性原理の成立しないスケール不変な空間における後方自己相似解の非存在に関して考察を行い,方程式系が放物-楕円型,放物-放物型のどちらの場合にも,スケール不変な空間において後方自己相似解が存在しないことを弱解の枠組みにおいて証明した.現在までの先行研究は,全て古典解の枠組みであり,非存在に関する考察は空間次元が2次元の場合のみであった.本研究では.方程式の持つスケール不変性に着目し,空間次元が3次元以上,かつ弱解の枠組みにおいて後方自己相似解の非存在を証明した.以上の研究成果は既に論文としてまとめられ,国際学術雑誌Journal of Mathematical Analysis and Applications(査読有り)に掲載済みである. 2.非圧縮性Euler方程式の時間局所可解性と非線形評価との関係 非圧縮性完全流体の運動を記述するEuler方程式に関して,その初期値問題の時間局所可解性と非線形評価との関係について,初期速度場に課す微分可能性の観点から考察を行った.本研究では,Besov空間及びTriebel-Lizorkin空間におけるEuler方程式の時間局所可解性の最適性を,特に微分階数に着目してその非綿形評価であるKato-Ponce型交換子評価の観点から考察し,Besov空間及びTriebel-Lizorkin空間が連続的微分可能な空間に埋め込まれない場合に,Kato-Ponce型交換子評価が破綻することを証明した.本研究で得られた結果より,Besov空間及びTriebel-Lizorkin空間におけるKato-Ponce型交換子評価の成立・不成立のための指数の必要十分条件が完全に特徴付けられたこととたる.また,Euler方程式の時間局所適切性を得るために必要な初期速度場の持つ微分可能性は,1が最適であることが示唆される.上記の結果は既に論文としてまとめられ,学術雑誌に投稿済みである.
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