2009 Fiscal Year Annual Research Report
含水多糖膜における水和構造に基くプロトン伝導性の検討
Project/Area Number |
09J01330
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤田 大輔 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | βキチン / プロトン伝導 / 構造解析 |
Research Abstract |
βキチンの水和状態でのプロトン伝導性の検討のために、βキチン水和構造の繊維X線回折による構造解析を行った。高結晶性のβキチンを産出するハオリムシの棲管を乾燥させずに精製を行い、水和構造を維持したままシンクロトロン放射光による撮影を行った。得られた回折のうちd>1Åの回折を用いて水和βキチンの原子座標を求めた。単位格子は空間群P2_1、単斜晶でパラメータがa=4.814Å b=11.67Å c=10.423Å γ=96.45゜の一本鎖構造であることがわかった。192個の回折を用いて計算を行い、最終的な原子座標では、構造の信頼度因子を表す値であるR1が0.1334と繊維回折としては十分な値を示した。この構造ではグルコサミン残基あたり2個の水が含まれていることがわかった。βキチンは天然では水存在下で合成されるため水和構造であると考えられ、ネイティブでの結晶状態を明らかにすることができた。また結晶内で一つの水はキチン分子との間で水素結合を形成しているが、もう一方の水は主鎖との間に水素結合をもたない場所に位置しており、これが水和βキチンの膜におけるプロトン伝導性に対して影響を与えている可能性が示唆された。この研究に関連してメタノール形燃料電池のため、βキチンメタノール錯体の構造を明らかにするためβキチンのメタノール錯体の調製を試みた。絶乾状態からメタノールに浸漬させるだけでは完全な錯体は得られず、水和状態からメタノールに浸漬させることにより完全なメタノール錯体が得られることがわかった。シンクロトロン放射光によりX線回折図の撮影を行い、構造解析を行う予定である。
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