2010 Fiscal Year Annual Research Report
含水多糖膜における水和構造に基くプロトン伝導性の検討
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09J01330
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤田 大輔 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | βキチン / プロトン伝導 / 構造解析 |
Research Abstract |
水和βキチンのX線による構造の再精密化を行った。前年度では分解能1Åまでの全ての回折点を用いて解析を行い構造の信頼度因子であるR1が0.1331と報告を行ったが、この解析では回折強度に対するバックグラウンドの強度を引き切れていないことがわかった。適切な回折点のみを用いることにより、R1値を0.0739まで下げることができた。X線構造解析では水素の位置を推定することはできるが、決定することはできない。水素位置の決定及び構造の重要な因子である水素結合様式を決定するために、重水素化したβキチン重水和物により中性子線回折解析を行った。決定された重水素の位置は水酸基と水に対してそれぞれ2パターンずつの位置が存在することがわかり、それに伴い水素結合様式も2バターン存在していることがわかった。同様にβキチン無水物の中性子線解析も行った。無水物ではX線解析でこれまで想定されてきた水素の位置とほぼ変わらず、水素結合様式が正しかったことが証明された。この構造に伴い偏光FT-IR測定を行い、平行方向で強度の強い水酸基由来ピークと垂直方向で強度の強い水酸基、アセトアミド由来ピークの帰属ができた。水和構造では結晶内に水が入ったことによりβキチンのアセトアミド基の自由度が増し、立体障害的に最も安定である、理想的なアンチペリプラナーの配座を取ることが分かった。これは無水構造では水素結合により理想的な位置から外れていることと異なる。水系での酵素反応や化学反応は、水和構造を取って行われるため、水和構造の知見は非常に重要である。
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Research Products
(1 results)