2009 Fiscal Year Annual Research Report
海洋における植物プランクトンの光環境適応の分子基盤とメカニズムの解明
Project/Area Number |
09J01384
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
得津 隆太郎 Hokkaido University, 大学院・生命科学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 光合成 / 光環境適応 / 植物プランクトン / 光化学系タンパク質 |
Research Abstract |
珪藻は、海洋全域に生息している主要植物プランクトンで、海洋の炭素固定の約40%を担う水圏の炭素循環系において最も重要な光合成生物である。このため、この藻類における光・海洋環境変動に伴う光合成効率(基礎生産量)の変化は、海洋生態系及び気候変動に大きく影響を及ぼすと考えられる。また、珪藻は遊泳能力を持たないため、海洋の有光層内における様々な水深で光適応しなければならない。特に、沿岸域に多く生息することから、海水の鉛直混合(海面と深層の混合)による影響を受け易い。しかし、珪藻が様々な水深間を輸送される際、どのように光適応するかを示した報告は無い。これらの点を明らかにするために、本研究では、海洋性植物プランクトンの中でも優占的に生息し、環境的に寄与が大きく、ゲノム解析済みのモデル中心目珪藻Thalassiosira pseudonanaを用いて研究を行った。本年度は、未だに確立されていない珪藻種の培養条件の確立、細胞の破砕条件の確立及び光化学系タンパク質の精製条件を検討した。これまで通常、珪藻の培養には組成が不安定な天然海水が用いられていたが、本研究では人工海水を用いた培養条件を確立した。また、得られた珪藻細胞をグラスビーズ法、BioNeb法、凍結融解法を用いて破砕を試みた。その結果、BioNeb法による細胞破砕が最もチラコイド膜の単離に適している事が明らかとなった。また、得られたチラコイド膜を、ドデシルマルトシドを用いて可溶化することで、珪藻の光化学系タンパク質の精製を行った。現在、精製された光化学系タンパク質超複合体について、質量分析及び色素分析による詳細な解析を行っている。
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