2009 Fiscal Year Annual Research Report
新規小胞体チャネル TRICの分子基盤及び機能的役割の解明
Project/Area Number |
09J01389
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山崎 大樹 Kyoto University, 薬学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 小胞体 / TRICチャネル / カウンターイナン / 肺 / IP3受容体 / 心肥大 / 高血圧 |
Research Abstract |
本研究では、「(1)新生期致死を示すTRIC-B-/-マウスの死因について」、「(2)遺伝子疾患型TRIC-A変異体及びTRIC-Bチャネル活性とイオン選択性」、「(3)各組織-細胞におけるTRICチャネルの機能的役割の解明」の3点について研究を進めてきた。 「(1)新生期致死を示すTRIC-B-/-マウスの死因について」 呼吸窮迫症候群におけるTRIC-B遺伝子スクリーニングについては実施する共同研究先を探しているところである。肺及び肝臓におけるグリコーゲンホスホリラーゼ活性測定実験は実施しなかったが、肺組織内リン脂質含有量測定実験については実施し、論文にまとめ投稿・受理された(7.研究発表を参照)。 (2)遺伝性疾患型TRIC-A変異体及びTRIC-Bチャネル活性とイオン選択性 TRIC・B精製タンパクの単一電流測定は共同研究先で実施中である。また、遺伝性不整脈との関連が示唆されたアミノ酸変異TRIC-Aタンパク及びKEVモチーフにおけるアミノ酸変異タンパクも精製し、すでに共同研究先に委託した。 (3)各組織・細胞におけるTRICチャネルの機能的役割の解明 TRIC-A-/-B+/-マウスにおいてイソプロテレノール負荷を実施したところ、投与3~4日後に心不全を起こし死亡した。また、TRIC-A-/-マウスでは14日間のイソプロテレノール投与により心肥大を誘発した。従って、TRICチャネル欠損はイソプロテレノールの負荷に対して、心臓に悪影響を及ぼすと考えられる。メカニズムまでは解明できなかったが、心筋細胞へのパッチクランプの適用や心テレメトリー、エコー、カテーテル検査等の実施を行い、基礎データを取得した。また、TRIC-A-/-において高血圧及び徐脈という循環器系の異常が観察され、血管の異常であることが示唆される結果を得ている。血管平滑筋あるいは血管内皮細胞のどちらが原因かを解明すべく、それぞれの細胞の単離の準備を進めているところである。 「(1)新生期致死を示すTRIC-B-/-マウスの死因について」では、IP_3受容体を介した小胞体からのCa_<2+>放出にTRIC-Bを介するカウンターイオンの小胞体内腔への移動が同期して起こっていることを明らかにした。TRIC-Bが欠損することで肺発達に異常をきたし死に至るため、TRIC-Bの肺での重要性が示された。また、新生児呼吸窮迫症候群様の症状であるため、遺伝子疾患の一因となっている可能性が考えられる。他のプロジェクトに関しては途中の段階であるが、今後の進展が期待される。
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Research Products
(4 results)