2009 Fiscal Year Annual Research Report
Helicobacter pylori接着抑制因子の究明とその作用機構の解明
Project/Area Number |
09J01393
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
関口 博太 Kyoto University, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Helicobacter pylori / 接着 / CD74 / カンキツ / auraptene / IL-8 / EGFR |
Research Abstract |
1981年以来、がんは我が国で死因の第1位を占め、特に胃がんは長年にわたり死因の第1位を占めていた。近年では、減少傾向にはあるものの、胃がんの死亡率は依然として高く男女ともに第2位である。一方で、胃がんの原因と考えられるHelicobacter pylori(HP)の胃粘膜上皮への接着メカニズムは十分に解明されていない。近年、HPの全タンパク質の約10%を占めるウレアーゼが胃上皮細胞のCD74と結合することが報告された。既知のHPレセプターと異なり、CD74への結合は炎症反応を誘導することも指摘されている。そこで、本研究ではCD74の発現を制御する物質の探索を試み、その接着抑制効果およびCD74発現抑制機構の検討を行った。その主な内容は以下の通りである。 これまで、ヒト胃がんNCI-N87細胞を用いて、CD74発現抑制因子を短期で多量に探索するため親和性を指標とした新規ELISA系を構築した。次に、上記アッセイ系を用いて抗炎症作用を有する食品因子のスクリーニングを行った。その結果、aurapteneなどのカンキツ類成分に活性を見出した。本年度は、aurapteneが、HPの細胞接着と炎症細胞の遊走に重要なIL-8の産生を有意に減少させるという興味深い知見を得ている。MEK阻害剤を用いた検討から、CD74の発現にはMEK/ERK経路が関与していることが示唆され、aurapteneはこれを抑制した。一方、siRNAによりCD74の発現を低下させた結果、aurapteneと同等のHP接着抑制効果を認めたが、IL-8の産生は逆に増強した。CD74の発現にはMIFの分泌の関与が示唆されているが、近年、MIFはEGFRとも結合することが報告されている。MEK及びEGFR阻害剤を用いて検討した結果、本細胞におけるIL-8の産生にはEGFRを介したバイパス経路の存在が示唆され、またEGFRの下流にERK1/2が存在することも推察された。 以上、本研究では新たなCD74の発現抑制食品因子を見出し、HPの接着やケモカイン産生を制御する新規の作用機構を明らかにした。
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Research Products
(2 results)