2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J01423
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤井 麻由子 Kyushu University, 人文科学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 日本古代史 / 対外交渉 / 唐代 / 遣唐使 / 菩薩戒 / 仏教 |
Research Abstract |
報告者はこれまで、仏教と対外交渉という視点から、日本の遣隋使について再検討を加えてきた。本年度は、唐代に行われた仏教色を強調する対外交渉(仏教的朝貢)の全容を把握することで、日本の遣唐使が仏教色を強調していたことの政治的意義を解明することを試みた。 第一に、唐代の皇帝権力と仏教の関係について理解を深めるため、唐の皇帝の中でも太宗・太宗皇太子承乾が菩薩戒を受けていたことついて分析を加えた。その結果、彼等は、隋代以前に受戒した皇帝達と同様に、信仰心のみならず、皇帝自ら衆生救済を主導する菩薩となることで人心掌握を図るといった政治的目的を持って菩薩戒を受けていたことが判明した。 第二に、唐代には、隋代以前に行われた事例を先例として、仏教的朝貢が行われていたことを明らかにした。周辺諸国は、皇帝が菩薩戒を受けて人心掌握を図るなど、隋代以前と同様に、唐が仏教を内政に転用していたからこそ、仏教色を強調した使者を派遣することで、仏教を介した良好な関係を唐との間にも構築できると考えたのであろう。 第三に、日本の遣唐使の中でも、八世紀、中国人僧侶を戒師として招請した遣唐使に注目した。唐代にも仏教的朝貢が多く行われていただけでなく、日本が中国皇帝に対して仏教色を強調した使者を派遣することの意味を承知していたと考えられるからには、遣唐使を通じた戒師招請は、戒律の整備という国内的な目的の他に、日本が唐に倣う崇仏国であると表明することで、仏教を介した良好な関係を築くという対外交渉上の目的を持って行われていたと推測してよかろう。 遣唐使については、これまで、仏教を含む唐代文化の導入に努めたという文化的側面が重視されてきた。今後は、上記以外の遣唐使についても同様の視点から再検討を加えることで、従来の遣唐使像に見直しを迫ることが可能になるものと思われる。
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Research Products
(3 results)