Research Abstract |
今年度行った研究は,次の4つに整理できる。1つ目は,小川琢治の中国研究が中国の学界に与えた影響に関する研究である。国内の大学・図書館で資料収集をし,その分析結果を国際歴史地理学会(International Conference of Historical Geographers)と京都大学人文科学研究所の共同研究班で口頭発表した。また,国際学会での報告内容は,英文書に発表した。2つ目は,留日中国人地理学者に関する研究である。とりわけ戦前に東京帝国大学に留学した王謨と蔡源明の両名に注目し,資料調査を行った。その成果は,中国・広州で開催されたThe 4th China-Japan-Korea Joint Conference on Geographyで発表する予定だったが,中国教育部からアブストラクトの許可が出ず,取り止めざるを得なかった。戦時中の日中関係に関連する内容だったことが原因とみられるが,残念でならない。3つ目は,満洲の地理学者の活動に関する研究である。活動を概観した論文を人文科学研究所の共同研究報告書に発表したほか,とくに目立った活動をした地理学者(「満洲の地政学」を主張した宮川善造ら)に関する論文を学会誌に投稿した。4つ目は,日本の植民地を対象とした地理学研究の歴史に関する研究である。1930年代の「植民地理学」の議論の展開を中心としつつも,樺太,台湾,朝鮮,関東州・満洲,南洋群島という5つの植民地を対象とする地理学研究の系譜を,19世紀にさかのぼって,全体として整理することを試みた。その成果の一部は,日本植民地研究会で口頭発表した。
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