Research Abstract |
福泉麗佳氏(東北大情報)との共同研究の下,有界領域上におけるべき型非線形項を持つシュレディンガー方程式(以後,(NLS)と略す)の定在波解の安定性について研究した.定在波解とは,時間に関して位相の周期的変動しか依存しない(NLS)の特別な形をした解である.そして,定在波解が安定であるとは,定在波解に摂動を加えて時間発展させても,定在波解に近い状態にあり続けることであり,そうでないときは不安定であるという. これまでは,空間領域が全空間の場合にはよく研究されており,空間次元をN,べき型非線形項の指数をpとすると,基底状態から作られる定在波解は,pが1+4/Nより小さいときには安定であり,pが1+4/Nより大きいときには不安定であることがよく知られている.このように1+4/Nを臨界値として,安定・不安定が変化し,ちょうど臨界値のときには不安定となる. しかし,空間領域が球の場合には,これと異なる現象が起こることが数値計算の結果により示唆されている.その数値計算とはFibich-Merle(2001)によるもので,彼らはpが臨界値のときである1+4/Nのときは,全空間と異なり,安定となることを予想した.この現象について厳密な証明を与えようと試み,一般次元については,以下の結果を得ることが出来た. (i)p=1+4/Nとする.このとき,振動数が十分大きい,または,-λ_{1}に十分近ければ,基底状態から作られる定在波解は安定となる.ここで,λ_{1}は球上のラプラシアンの第1固有値である. このように一般次元では,振動数に技術的な条件を課さなければならないが,空間1次元に限れば,この条件を取り除くことが出来る.つまり,次を示すことが出来た. (ii)N=1,p=5とする.このとき,基底状態が存在する全ての振動数に対して,それから作られる定在波解は安定となる.
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