2009 Fiscal Year Annual Research Report
ホヤ初期発生における遺伝子発現機構のゲノムワイドな解析
Project/Area Number |
09J01533
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野田 武志 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 発生生物学 / 遺伝子発現制御 / 母性因子 / カドヘリンスーパーファミリー / ゲノム / 細胞の分化 / 形態形成運動 |
Research Abstract |
まず、業績から書く。かねてから投稿中であった論文の、"Early zygotic expression of transcription factors and signal molecules in fully dissociated embryonic cells of Ciona intestinalis : A microarray analysis."がDev Growth Differ.に受理され、発表した。この研究のもっとも重要な点は、解離され、細胞間相互作用が阻害された胚で、brachyury遺伝子の発現量が増加することである。この現象の解釈として、brachyury遺伝子の発現における、細胞間相互作用による遺伝子発現抑制機構の存在があげられる。Picco V,et al.Development.2007で、細胞間相互作用によるbrachyury遺伝子の発現抑制機構の存在が発表されたが、少なくとも自身の論文の投稿開始時点では、この知見はなかった。つまり、この論文の意義は、脊索分化運命決定機構という、ホヤで特に重点的に研究されているテーマであっても、マイクロアレイというゲノムワイドな解析を可能とするテクニックにより、新規の現象を発見することができることを示した点である。まだ学会発表や論文としてまとめていない研究に、1、母性mRNAが初期胚で顕著に分解される転写因子、シグナル伝達分子の解析と、2、初期胚でzygoticに発現するカドヘリンスーパーファミリー遺伝子の解析があるが、1、に関して、Ci-p53/p73aの遺伝子の機能を阻害すると、カタユウレイボヤの脊索へと分化する細胞が著しく減少することが明らかになった。また、機能阻害胚で脊索の分化を制御する、転写因子、シグナル伝達分子の発現を調べると、胚の前方でのZicLの発現とbrachyury遺伝この発現が著しく減少することが明らかになった。さらに、阻害胚は原腸陥入運動が正常に行われないことが明らかになった。2、で解析する、カドヘリンスーパーファミリー遺伝子について、以前の研究により、原腸陥入がおきる前のステージから、zygoticな遺伝子発現をするということを明らかにしている。また、Xenopuでは、このカドヘリンスーパーファミリーとほぼ同一のドメイン構造のカドヘリンが原腸陥入を制御しているという報告もある。よって今後は、1、2の二つの研究テーマを統合し、Ci-p53/p73aによるカドヘリンスーパーファミリー遺伝子の発現制御の有無も含め解析を進め、研究をまとめるつもりである。
|
Research Products
(1 results)