2009 Fiscal Year Annual Research Report
タンガニイカ湖産カワスズメ科魚類における協同繁殖魚の分類学的・進化学的研究
Project/Area Number |
09J01627
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田城 文人 Hokkaido University, 大学院・水産科学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Julidochromis / Chalinochromis / タンガニイカ湖 / カワスズメ科魚類 / 協同繁殖 / 分類学的研究 / 種間雑種 / 進化 |
Research Abstract |
アフリカのタンガニイカ湖には、約200種類のカワスズメ科魚類が生息する。本研究は、近縁性が示唆される協同繁殖魚Julidochromis属とChalinochromis属を対象として、1.両属に関連する分類学的諸問題の解決を図る。2.Julidochromis属の形態学的種間雑種を遺伝に精査する。 3.Julidochromis属とChalinochromis属の進化学的考察を行うことを目的として行われている。本年度は主に各研究で用いる標本の採集とデータ収集を行った。標本採集は11月に1ヶ月間現地へと赴き、約200個体の対象種を採集した。これまでの研究状況および明らかになったことを以下に示す。 1.Chalinochromis属の分類を形態形質を用いて再検討した結果、本属内に大きく4つの形態群を認めた。しかし、用いた標本の採集地が大きく偏っており(主に湖の北端と南端)、包括的な検討ができていない。今後、他機関の標本および各種のタイプ標本の観察を行い、本属の安定的な分類体系を再構築する。2.Julidochromis属とChalinochromis属の類縁性の検討に関して、現在比較解剖学的アプローチから着手している。3.Julidochromis属2種間における形態学的推定種間雑種をマイクロサテライト遺伝マーカーを用いて遺伝学的に調査した。現在までに5種類のマイクロサテライトマーカーの調査を終え、4種類において種特異的なアレルが検出された。推定雑種個体が生息する地域の標本は、その多くで遺伝子型と表現型が一致せず、遺伝学的特徴と形態的特徴との間に矛盾がみられた。つまり、これらの個体は雑種の可能性が高いことが示唆された。一方で、遺伝子型と表現型が親種と一致する個体も存在することから、本地域のJulidochromis属魚類は非常に複雑な個体群組成を有することが明らかになった。
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