2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J01659
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
河野 健 大阪大学, 微生物病研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | HIV / リアルタイムイメージング / 蛍光抗体染色法 / Vpr / uncoating |
Research Abstract |
HIVの細胞内へ侵入後の感染分子メカニズムは、これまでの生化学的手法では解析が困難であった。申請者は顕微鏡によるイメージング技術によって、細胞侵入後のウイルスの感染メカニズムを明らかにしようと試みた。 HIVは細胞に感染後、自身のゲノムRNAを包む砲弾状のコアを崩壊させ1本鎖RNAを2本鎖DNAに変換する逆転写を行う。コアはキャプシドで形成されており、このコアの崩壊の事をuncoatingと呼ぶ。前年度、申請者は蛍光タンパク質でウイルス粒子をラベルし、蛍光顕微鏡で細胞内に侵入したウイルス粒子だけ検出する事に成功している。このラベルウイルスを細胞に感染させ、感染後、継時的に細胞を固定、抗キャプシド抗体で染色する事でこれまで謎であったuncoatingの速度を測定する事に成功した。 申請者の所属する研究室では、これまでにサル細胞で増殖が可能になったサル指向性HIV-1の作製に成功している。このサル指向性HIV-1はキャプシドの一部とウイルスアクセサリータンパク質であるVifがサルで増殖可能なウイルスSIVmac239の物と置換されている。このウイルスはカニクイザル細胞での増殖は向上していたが、ヒト細胞では逆に低下していた。この理由を調べるために、ヒト細胞でのサル指向性HIV-1のuncoating速度を測定した。その結果、サル指向性HIV-1は元々の野生型HIV-1と比べuncoatingの速度が遅くなっていることがわかった。またヒト細胞で馴化させ、増殖能が向上したサル指向性HIV-1のuncoating速度は野生型HIV-1に近づいていた。以上の結果、サル指向性HIV-1はuncoatingの速度が遅くなることでヒト細胞での増殖能が低下していると考えられた。この結果はこれまでブラックボックスであった、細胞内侵入後のウイルスの挙動を調べた重要な知見であり、今後、この顕微鏡を用いたウイルス粒子のイメージング技術によって、抗HIV-1因子等の様々な宿主タンパク質とウイルスとの関わりを解析できると考えている。
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Research Products
(5 results)