Research Abstract |
本研究では,高次積率を扱った構造方程式モデリング(以下,高次積率SEM)に関してこれまで問題であった「観測変数が多い場合の推定時間の増大」を解決する手法を提案することおよび,高次積率SEMの実データへの適用にあたっての有効性について検討し,一般ユーザーへの高次積率SEMの分析パッケージの公開を行うことを大きな目的とする。その中で本年度においては,高次積率SEMで用いられるADF推定量に含まれる重み行列と関連する部分に工夫を施して推定時間を減少させる方法について研究を行った。具体的には,重み行列のサイズを決める積率ベクトルの要素からいくつかの要素を選択して推定する方法を提案し,効果を検討した。 研究方法として,まずは選択する積率の数と方法に関する規則を決定した。基本的に,推定には2次と3次の積率を利用することを想定し,2次の積率は全て利用し,3次の積率から推定に利用する積率の選択を行うこととした。その際,観測変数ごとの3次の積率に関するバランスを考慮した上で決まった数の要素を選択する規則を作り出した。続いて,それに基づいてR言語でのプログラミングを行い,分析環境を整えた。そして,シミュレーションデータと実データへの適用を行い,推定時間や推定精度を従来の推定方法と比較することで,提案手法の有効性を確認した。 研究成果としては,シミュレーション研究から,提案した方法を用いることによって多くの変数を扱ったモデルであっても従来のADF推定法よりもかなり少ない時間で推定が可能であることが分かった。また,シミュレーション研究で扱ったモデルに関してはこれまでの推定法と同様,もしくはそれ以上の精度の高さでモデル母数の推定を行うことが出来る可能性が示された。さらに,実データの分析からも本手法によって妥当な母数推定値が得られることが示唆され,手法の有効性を示す結果となった。
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