2010 Fiscal Year Annual Research Report
プラナリア生殖戦略決定機構:ヒストン修飾から見た幹細胞の生殖細胞への分化能
Project/Area Number |
09J01783
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
野殿 英恵 慶應義塾大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | プラナリア / 移植 / 幹細胞 / 生殖戦略 / 生殖様式 / 有性生殖 / 有性化因子 / neoblast |
Research Abstract |
先天的有性個体(InS)のもつ「自律的に有性状態を開始する能力」が多能性幹細胞自体に規定されているか検討した。X線照射により幹細胞を消失させた個体へ幹細胞を移植した結果、致死線量の場合は全身の細胞がdonor由来となったのに対し、非致死線量ではキメラになった。よってX線感受性の高い細胞中に幹細胞が含まれると示された。さらに由来個体の異なる幹細胞のキメラ個体作製は本手法が初であり、細胞培養が実現していない本生物において細胞をin vivoで解析する有効な手段となる。実際に先天的無性個体にInSの幹細胞画分を移植しキメラ個体を作製した結果、全身がInS由来となった場合と同様、有性になった。これはInS細胞による有性状態の決定が、AS細胞による無性状態の決定より上流にあることを示す。さらに移植後にできた卵巣の形態はAcS(先天的無性個体を人為的に有性化した個体)様であったことから、InSとAcSでは「自律的に有性状態を開始する能力」の他に卵巣形態制御にも差があると分かった。移植後の個体の交配にも成功し、F1世代にはdonor特異的なマイクロサテライトバンドが見られ、移植細胞の生殖細胞への分化を確認できた。またキメラ個体の交配ではdonorに加えrecipient特異的なバンドも見られたことから、双方の幹細胞が長期的(1年以上)に維持され、共に生殖細胞に分化したと確認できた。 近縁種での報告を参考に本種においても幹細胞の分画に成功した。しかし近縁種とは倍数性や個体サイズ等が異なるためFACSの条件検討に時間がかかり、分画細胞を用いて生殖戦略規定に関わる遺伝子を同定するには至らなかったが、本研究で、有性状態の決定には有性化因子の自律的産生開始と維持の2段階があり、前者の能力の有無がInSとAcSの生殖戦略決定の差異であること、またそれが幹細胞自体に規定されていることを明らかにした。
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Research Products
(7 results)