2009 Fiscal Year Annual Research Report
ナノスケール膜構造における熱流体輸送現象とその制御
Project/Area Number |
09J01798
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中野 雄大 Tohoku University, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 脂質膜 / 分子動力学 / 熱伝搬 / 界面抵抗 / 運動量伝搬 |
Research Abstract |
ナノデバイスの実現を志向した、生体由来の巧妙で優れた機能を持つソフトマターとして脂質膜が注目されており、ナノスケールのデバイスにメカニカルなストレスが加えられた場合、材料内では摩擦による運動量の伝搬が発生し、それに付随して熱が励起される。これらを制御し、最適な設計が求められることから、本研究では、熱や運動量の輸送について分子スケールのメカニズムの解析を中心に研究を実施した。水中にリン脂質が形成する二重膜について大規模分子動力学シミュレーションにより、水-リン脂質-リン脂質-水の系における熱・運動量の流束を構成する分子ダイナミクスを分解的に解析した。熱エネルギー流束は従来の分子間エネルギー伝搬の概念を拡張し、多体ポテンシャルが支配する一般の系への適用を想定したサイト間エネルギー伝搬の概念を用いて評価し、定量的計測により卓越する成分を指摘した。さらに、総括的熱伝導率と熱抵抗を評価し、脂質膜の方向によって熱伝導率の異方性を有すること、脂質膜中央の界面が示す熱抵抗は分子種によって異なり、界面領域の密度がその要因の一つであることを明らかにした。また、せん断を課した系に発生した運動量流束の計測では、流束の構成成分である分子間及び分子内の各相互作用は膜面方向のせん断については、正と負の寄与をなし、脂質分子の頭部・尾部でその正負が反転した。面内方向のせん断では、頭部・尾部の運動量流束の大きさが異なり、脂質の各部によって粘性が異なるなどの知見が得られた。
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Research Products
(4 results)