2010 Fiscal Year Annual Research Report
ナノスケール膜構造における熱流体輸送現象とその制御
Project/Area Number |
09J01798
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中野 雄大 東北大学, 流体科学研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 脂質二重膜 / 分子動力学シミュレーション / 運動量輸送 / 摩擦 / 表面粘性 / レオロジー |
Research Abstract |
本研究では生体内の輸送機構や生体模倣材料を用いたBioMEMSなどの応用に際して極めて重要な脂質二重膜について,せん断流下での運動量伝搬特性の解析を行い,分子スケールの摩擦機構を議論し,その現象を制御することにより,必要な熱流体現象を「設計」するための基礎とすることが目的である.水分子と単一の脂質分子種から構成された脂質二重膜を用い,膜面に対して水平なせん断流と膜面内のせん断流を膜面方向に課し,運動量流束をそれぞれ発生させる非平衡分子動力学シミュレーションを用いることにより,運動量伝搬特性の計測を行い摩擦係数及び表面粘性の流動特性と脂質膜のレオロジーとの関係を明らかにした.脂質分子については,頭部は同じで,尾部の炭素数が異なる2種類の分子(DPPC, SMPC)を用いた.膜面方向のせん断により脂質単層膜間の摩擦係数を評価したところ低せん断率ではSMPC膜の摩擦係数のほうがDPPC膜よりも2倍以上大きい.しかし,せん断率が増加するとその差は小さくなってゆく.これは摩擦力により脂質尾部がせん断流後方へ傾き角を持って配向することで絡み合った状態がほどけてゆくためである.一方で,面内方向のせん断により表面粘性を評価したところ2種類の脂質分子による違いはほとんどなくせん断率が増加するに従って表面粘性は共に減少している。この理由として面内方向のせん断では構造の変化は小さく尾部の影響が小さいためであると考えられる.
|
Research Products
(6 results)