2009 Fiscal Year Annual Research Report
トゲネズミ三種の比較解析によるY染色体消失過程の推定
Project/Area Number |
09J01887
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
村田 知慧 Hokkaido University, 大学院・生命科学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Tokudaia / 性染色体 / SRY / 進化 / 分子系統解析 / Zoo-FISH解析 |
Research Abstract |
トゲネズミ3種のうち、アマミトゲネズミとトクノシマトゲネズミは、それぞれ2n=25、2n=45で、XO/XO型の性染色体構成をもち、Y染色体だけでなく性決定遺伝子SRYを消失した極めてめずらしい哺乳類である。一方、オキナワトゲネズミ(以下オキナワ)は2n=44、XX/XY型で唯一Y染色体をもつ。分子細胞遺伝学的な手法を用いた3種の比較解析により、XO型トゲネズミのY染色体の消失過程を明らかにすることを目的とし、平成21年度は、研究実施計画にある3種の系統関係の解明と、オキナワにおけるSRYの存在有無の確認、機能性予測、染色体上の位置の確認をおこなった。分子系統解析の結果、オキナワが共通祖先から先に分かれ、XO型2種の共通祖先でY染色体が消失したことが示された。PCR法とサザンブロット解析、FISH法の結果、一般的な哺乳類では単一のSRYを、オキナワはY染色体上に複数コピーもつことがわかった。オキナワには少なくとも24種類のSRY配列が存在し、3配列はORFが保存されていたが、残り21配列には中途ストップコドンが存在した。全コピーにおいて、他種では保存されたDNA結合表面のひとつにアミノ酸置換がみられたことから、3種の共通祖先に生じた変異であることが示唆された。オキナワのSRYの機能性は今後、詳細に調べる予定である。また、オキナワの性染色体の特徴を明らかにするために染色体解析をおこなった結果、オキナワのX、Y染色体は一対の常染色体の融合により、大きなユークロマチン領域を獲得したことが明らかとなった。この構造変化により、オキナワは唯一Y染色体の消失を免れた可能性がある。SRYの消失は、Y染色体の消失において鍵となるイベントであるが、オキナワのSRYおよびY染色体に特異的な変異がみられたことから、Y染色体の運命に関わる変異が、XO型2種だけでなく、オキナワを含む3種の共通祖先に生じたという新たな可能性が、本研究によりはじめて示された。
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Research Products
(5 results)