2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J01964
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
蘆田 裕史 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | シュルレアリスム / モード / ファッション / 衣服 / 身体 / 潜在性 / フランス:ベルギー:チェコ |
Research Abstract |
本年度はまずシュルレアリスムに関係の深い雑誌である『ミノトール』『391』(以上フランス)、ジョルジュ・バタイユやE・L・T・メセンスが強く関わった『ドキュマン』、P=G・ヴァン・ヘック編集の『ヴァリエテ(多様性)』、『ローデ・ツェイル(赤い帆)』(以上ベルギー)などの雑誌の精査を通じて、シュルレアリスムにおける衣服の問題の重要性を再確認し、その分析を行った。 アンドレ・ブルトンらのテクストとマックス・エルンストらのイメージから、人間の身体が衣服の支持体(=マネキン的身体)と捉えられていた可能性を、「抽象化される身体-ダダ・シュルレアリスムにおけるマネキンと身体」において明らかにした。一方、ベルギーのシュルレアリスムについて、ルネ・マグリットの広告作品やオート・クチュールのメゾン《ノリーヌ》を共同経営していたヴァン・ヘックによるモードについてのエッセイなどを手がかりに、パリのシュルレアリスム以上にモードが重要な意味を持っていたことを解明した。それと同時に、マグリット、メセンス、マルク・エーマンスらベルギーのシュルレアリストおよびエルンストらパリのシュルレアリストのイメージを分析することで、衣服制作における根源的な行為である「切断」が身体に対しても適用されていることを指摘し、フランス・ベルギー両国のシュルレアリスムにおける共通する身体観があることを明らかにした。さらに、「シュルレアリスムにおける衣服は潜在的身体として捉えられる」という仮説を裏付ける理論の構築として、ジル・ドゥルーズやジョルジョ・アガンベンらの「潜在性」概念の理論の検討を試みた。ブルトンによる美の定義とそのテクストに添えられたイメージから、その概念がドゥルーズ的な意味での潜在的イメージに合致することを明らかにし、シンポジウム「イメージ(論)の臨界[6]:表象可能性への配慮」にて発表した。
|
Research Products
(3 results)