2009 Fiscal Year Annual Research Report
カシノナガキクイ共生系の構成生物群相解析とその共生生態の解明
Project/Area Number |
09J01976
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
遠藤 力也 Kyoto University, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ナラ枯れ / 森林病害虫 / カシノナガキクイムシ / 養菌性キクイムシ / 共生酵母 / アンブロシア菌 / マイカンギア / 複合共生 |
Research Abstract |
本研究は、森林流行病"ナラ枯れ"の病原菌を木から木へと媒介するカシノナガキクイムシ(以下、カシナガ)の生態を、微生物との共生関係に着目して詳細に解き明かすことを目的としたものである。カシナガは最重要森林病害虫の一つであるにもかかわらず、共生微生物との間にいかなる共生関係を結んでいるかは殆ど解明されていない。カシナガと共生微生物との間に成立している共生系に対する理解を深めることは、ナラ枯れの防除、延いては森林環境保全の一助になると期待される。 カシナガは共生菌類を巣内で育てて餌にする"農耕営む"養菌性キクイムシの一種とされる。その餌となる菌類はアンブロシア菌と総称され、共生酵母類がその主体とされてきた。カシナガメス成虫の背部分にはマイカンギアと呼ばれる特殊な器官があり、この中に餌となる菌(酵母)と植物病原菌(カビ)を格納しているといわれてきた。しかし、マイカンギアを介して実際に伝搬される共生菌類の組成と、いかにして新しい巣の中に定着させるかは判っていなかった。平成21年度に実施した本研究によって、これらの解明に成功した。すなわち、マイカンギアを介して伝搬される菌類相で優占していたのは、本研究代表者が新種記載したカシナガの共生酵母Ambrosiozyma kamigamensisであり、植物病原菌Raffaelea quercivoraも比較的高頻度に検出された。 しかし、これまでの我々の研究から、カシナガの巣内で優占している菌類は別の共生酵母Candida属菌2種であることが判っており、この不一致の理由は不明である。本研究成果は、菌類に限ってもカシナガが複数の種と密接な共生関係を持つことを示し、カシナガ共生系が従来の認識よりもはるかに複雑な複合共生系であるということを強く示唆するものである。
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Research Products
(1 results)