2009 Fiscal Year Annual Research Report
植物-線虫間相互作用の解明に向けた植物寄生性線虫表皮上タンパク質の解析
Project/Area Number |
09J01991
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
新屋 良治 Kyoto University, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | マツノザイセンチュウ / プロテオミクス / 表面タンパク質 / 分子生物学 / マツ材線虫病 |
Research Abstract |
1年度目は当初の計画通りプロテオーム解析によるマツノザイセンチュウ(以下、ザイセンチュウ)表面タンパク質の網羅的同定を行い、植物寄生性線虫において初めてその表面タンパク質の全容を明らかにするとともに、宿主マツとの相互関係において重要な役割を担う可能性の高い分子を絞り込んだ。具体的には、ザイセンチュウをBotrytis cinerea菌叢上(NGF)およびクロマツ実生苗中(NGP)で増殖させ、これらから表面タンパク質を抽出しプロテオーム解析に供試した。その後、抽出総タンパク量を定量し、NGFおよびNGP由来線虫の表面に存在する総タンパク質量の比較を行った。その結果ザイセンチュウは宿主マツ内においてin vitroでの菌叢上培養時に比べ約9倍多くのタンパク質をその体表面に提示していることが明かとなった。次に、タンパク質のディファレンシャル解析を行い、宿主マツ内で有意に発現量が変化したタンパク質に関してMALDI-TOF/MS解析による同定を試み、その結果、有意に発現の増加したタンパク質中には活性酸素種(ROS)調節に関与する分子、およびROSのスカベンジャー(抗酸化物質)として知られる分子が同定された。マツ材線虫病の発病機構においてはマツのザイセンチュウ侵入に対する過剰なROS生成がひとつのキーファクターであることが従来から示唆されており、今回明らかとなったROSの調整に関与する分子およびスカベンジャーはザイセンチュウが宿主マツに対して感染を成立させ、枯死に至らしめる上でなんらかの重要な役割を担っていると考えられる。本研究ではプロテオーム解析によって同定した分子に対する抗体を使用してそれらが実際にザイセンチュウ体表面に局在することも確認した。以上の研究をまとめた論文を現在投稿中である(Shinya et al. under revision)。
|
Research Products
(6 results)