Research Abstract |
本年度は,多様な資料を統合的に管理する必要がある文化遺産セクターの業務システム要求分析として,中でも特に横断的な性格を持つ博物館の図書室(以下,図書室)に着目し,調査・分析を行った.研究方法は,1)既存統計資料の調査・分析による図書室の定量的な変化の整理,2)統計刊行以降のWebでの現状調査,3)質問紙と聞き取りによる定性的な業務分析,である、その結果,1)統計上の図書室のここ20年の変化,2)図書室の類型と業務,3)図書室統計の問題点,が明らかになった.統計資料調査の結果,図書室について分析可能なのは『専門情報機関総覧』だけであった.分析の結果,図書室は、1)全体的に縮小傾向,2)外部化が進行,3)規模格差が拡大,4)内部指向,5)資料購入費が減少傾向,6)受入資料数は横ばい,という状況にあった.現状調査の結果,約7%が閉館していた.存続していた機関では,統計よりも情報化が遅れていた.質問紙による業務分析調査の結果,資料収集に関する業務は実施率が全体的に高く,利用者支援や図書室の情報化業務は全体的に低かった.聞き取り調査では,資料の収集・組織化・保存・廃棄に関して他の図書館にない特徴がみられた.質問紙と聞き取りの結果から,図書室を実施業務の観点で,1)情報部門型,2)最小限型,3)基本型,4)拡大型,5)独立型の5つに類型化し,業務モデルを作成した.各調査の結果から,既存統計調査には,1)不安定な分類,2)不明確な対象,3)不適切な設問,という問題があり,定量的な分析が困難であることがわかった.結論として,現状では図書室を十分な精度で定量的に分析可能な統計はないということと,明らかになった図書室の変化を鑑み既存の統計は改善が必要であるということ,がいえる.また,情報組織化業務と情報共有・情報交換に重点を置いたシステムの必要性が明らかになった.
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