2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J02005
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
甲山 哲生 Hokkaido University, 大学院・環境科学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 食植性昆虫 / ホストレース / 生態的種分化 / AFLP / 集団遺伝学 |
Research Abstract |
本年度はまずキクビアオハムシのサルナシ利用集団とオオバアサガラ利用集団について,異なる食草への適応が集団間の遺伝的分化にどの程度寄与するかを調査するためにAFLP法を用いたゲノム解析を行った。材料として用いたキクビアオハムシの越冬成虫個体は,2008年度および2009年度に本州の7地点(両集団が同所的な1地点を含む)において,各食草からの4集団ずつ採集した。6通りの選択的プライマーを用いて,合計199個体から477のAFLPマーカーを得た。これらのマーカーの中で,集団間で中立仮説を大きく逸脱するような分化が見られる遺伝子座について,食草が同じもしくは異なる集団の組合せで比較した結果,全遺伝子座の2~3%が異なる食草への適応に関連して自然選択を受けている可能性が示唆された。しかし,サルナシ利用-オオバアサガラ利用のキクビアオハムシ集団間で完全に分化した遺伝子座が見られなかったこと,また全遺伝子座を用いた解析では集団間の遺伝的距離は利用する食草に関係なく地理的に離れた集団間で大きい傾向が見られたことから,本種においてはサルナシ利用からオオバアサガラ利用への食草範囲の拡大・食草変更が各地で独立に生じた可能性が高いと考えられる。この結果は,生態的種分化が平行して起こることを示しており,極めて興味深く,当初の期待を上回る結果である。また今年度は,次年度に行うコンディショニング(過去の摂食経験による選好性の変化)についての研究の準備を行った。コンディショニングは食草変更やホストレース形成において重要な役割を担っていると考えられるが,本種を含む植食性昆虫では,実験に時間を要するため,あまり研究されていない。今年度はこの実験の準備として,飼育によって得られた多くの未交尾個体を越冬させており、食草が利用可能になる5月中旬から実験を行う予定である。
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Research Products
(2 results)